転記作業が利益を削る──“二重入力”をなくすシステム設計とは
二重入力をなくし、利益を守る
2026-03-07

医療現場での事務自動化が利益改善につながるというニュースは、多くの企業にとって示唆に富んでいます。注目すべきは高度な医療技術ではなく、日々の事務作業、とりわけ「転記作業」の見直しです。多くの企業では、システムが導入されているにもかかわらず、エクセルへの再入力や別システムへのコピー&ペーストが日常的に行われています。こうした二重入力は小さな無駄に見えますが、実は確実に利益を削っています。
本コラムでは、転記作業がなぜ利益を圧迫するのか、そしてそれをなくすシステム設計の考え方を解説します。
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目次
【記事要約】川崎幸病院、DX推進で人件費率を抑制し8億円の利益積み増しへ
国内有数の大動脈手術実績を持つ川崎幸病院は、将来の建て替え資金確保と医療継続を目的に事務部門のDXを推進している。退院サマリーや褥瘡治療計画の作成にAIやRPAを導入し、月間数百時間規模の作業を削減。電子カルテ連動やウェブ問診で転記業務も省力化する。人件費率を40%から35%へ引き下げることで、売上拡大に頼らず今後3年で経常利益を8億円積み増す方針だ。
出典:日本経済新聞「大動脈手術 国内最多の川崎幸病院 DXで利益8億円増目標 事務を自動化 医療継続、建て替え資金に」2026年2月26日付朝刊
ポイントをひとことで
転記作業が残っている状態は、システムが業務の流れを十分に支えきれていないサインです。人がデータの橋渡しを続ける限り、人件費は固定費として膨らみ続けます。システム投資の判断は機能の充実度ではなく、どれだけ二重入力をなくせるかで測るべきです。入力を一度で完結させられるかどうかが、利益率を左右する分かれ目になります。
転記作業は「目に見えない固定費」である
転記作業は、現場では当たり前の業務として扱われています。受注情報を基幹システムに入力し、その内容をエクセルにまとめ直し、さらに別の管理ツールへ登録する。こうした流れは珍しくありません。
一回の転記にかかる時間は数分かもしれません。しかし、それが毎日何十回も発生し、部署横断で繰り返されれば、月間・年間では膨大な時間になります。その時間は人件費として確実に発生しています。
さらに問題なのは、転記作業は売上を生まないという点です。営業や開発とは異なり、利益を直接生み出す活動ではありません。それにもかかわらず、恒常的に人の時間を消費し続けます。これは実質的に固定費を押し上げている状態です。
なぜ転記はなくならないのか
転記作業がなくならない理由は大きく二つあります。
一つは、システム同士がつながっていないことです。部署ごとに導入されたツールが独立しており、データ連携が前提になっていません。そのため、人が橋渡し役を担っています。
もう一つは、パッケージシステムに業務を合わせきれなかった結果、例外的な運用が増えたことです。パッケージでは対応できない部分をエクセルで補完し、そのデータを再度入力するという運用が常態化します。
こうした状況では、いくら部分的にRPAを導入しても、本質的な解決には至りません。根本的に「入力は一度だけ」という思想で全体を見直す必要があります。
転記が利益を削るメカニズム
転記作業が利益を削る理由は単純です。
第一に、人件費が増えます。同じ売上でも、業務量が多ければ必要な人員も増えます。結果として人件費率が上昇します。
第二に、ミスが発生します。転記ミスは確認作業を増やし、場合によってはクレームや再処理を招きます。これは追加コストです。
第三に、スピードが落ちます。情報がリアルタイムで共有されず、報告や意思決定が遅れます。これは機会損失につながります。
つまり、転記は単なる作業ではなく、利益率をじわじわと下げる要因なのです。
“入力は一度だけ”という設計思想
転記をなくすための基本原則は明確です。入力は一度だけにすることです。
例えば、Webフォームに入力された顧客情報が、そのまま受注管理、請求管理、在庫管理に連動する仕組みであれば、再入力は不要です。営業担当が入力したデータを事務が再度打ち込む必要はありません。
このためには、最初からデータ連携を前提に設計する必要があります。後付けでツールをつなぐのではなく、業務全体を俯瞰し、どこで情報が発生し、どこで利用されるのかを整理することが重要です。
フルスクラッチ開発が選択肢になる理由
既存パッケージでは、どうしても業務と完全に一致しない部分が生まれます。その隙間をエクセルや手作業で補うと、転記が発生します。
フルスクラッチ開発では、自社の業務に合わせて最初から設計できます。受発注、在庫、請求、顧客管理などを一貫して連携させることで、転記の発生余地を極小化できます。
重要なのは、単に機能を追加することではありません。どのデータがどこで発生し、どこで使われるのかを整理し、無駄な入力を生まない流れを作ることです。これが結果的に人件費率の改善につながります。
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転記ゼロがもたらす経営効果
転記がなくなると、業務は軽くなります。しかし本当に重要なのは、その先です。
人を増やさなくても売上を伸ばせる体制が整います。あるいは、同じ売上でも必要人員が減ります。その分、利益が残ります。また、リアルタイムでデータが共有されるため、意思決定が早くなります。これは競争力の向上にもつながります。
転記の削減は単なる効率化ではなく、利益体質への転換なのです。
まとめ
転記作業は小さな無駄に見えますが、積み重なれば確実に利益を削ります。人件費率の改善を目指すのであれば、まずは日々の二重入力を見直すことが出発点です。
システム投資を検討する際は、「どの機能を追加するか」ではなく、「どの転記をなくせるか」という視点で考えることが重要です。入力は一度だけで済む仕組みを実現できれば、業務は軽くなり、利益は自然と積み上がります。
利益は売上の拡大だけで決まるものではありません。日々の転記をなくすことから、利益改善は始まります。
転記をなくすことは、単なる業務効率化ではありません。どこでデータが生まれ、どこで使われているのかを丁寧に整理し、「入力は一度だけ」で回る仕組みをつくることが、本質的な利益改善につながります。
当社フレシット株式会社は、既存のパッケージに業務を合わせるのではなく、現場の実態を細かくヒアリングしながら、無駄な二重入力が発生しない仕組みを一から設計するフルスクラッチ開発を強みとしています。受発注、在庫、請求、顧客管理などを横断して連携させることで、転記の発生そのものを減らすことを目指します。
「エクセルへの再入力が当たり前になっている」「部門ごとにデータが分断されている」といった状態を見直したいご担当者さまにとって、オーダーメイドのシステムは大きな選択肢になります。転記ゼロを前提にした仕組みづくりをご検討の際は、ぜひ、当社フレシット株式会社にご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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