【マツダの開発改革から読み解く】発注者とシステム開発会社は対等であるべき理由──プロジェクト成功の分岐点とは
対等な意思決定がプロジェクト品質を高める
2026-03-28

システム開発において、「発注者が要件を出し、システム開発会社が作る」という関係が一般的とされています。しかし、この関係性のままでは、プロジェクトが期待通りに進まないケースも少なくありません。
本来、システム開発は単なる発注と受託ではなく、共に価値をつくるプロセスです。本コラムでは、なぜ発注者とシステム開発会社は対等であるべきなのか、その理由と、プロジェクト成功における分岐点について解説します。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
目次
【記事要約】マツダ、部品点数肥大からの脱却と水平協業で開発体制を再構築
マツダは製品への強いこだわりから、車種ごとのグレードや色、機能の増加により部品点数が膨張し、結果としてコスト構造が複雑化していた。この非効率を是正するため、従来の階層的なサプライチェーンを見直し、部品会社と対等な関係で初期段階から共同開発を行う体制へ転換した。仕様の整理や部品の共通化を進めつつ、開発段階からの密な連携により無駄を削減し、コストと開発効率の両立を図る。こうした構造改革により、外部環境の変動に左右されにくい強靱な経営基盤の確立を目指している。
出典:日本経済新聞「Re:road マツダの覚悟(上)コスト減へ3本の矢走る マツダ、部品会社と開発ワンチーム 米関税の危機にも抵抗力」2026年3月19日付朝刊
ポイントをひとことで
システム開発の失敗は、技術ではなく意思決定の分断から生まれます。発注者とシステム開発会社が役割で分かれたまま進むと、業務と設計の間にズレが残り続けます。重要なのは、要望を渡すことではなく、目的と判断基準を共有することです。互いに踏み込んで議論できる関係であれば、表面的な要件ではなく本質的な課題に向き合えます。この差が、作って終わるシステムになるか、使い続けられる基盤になるかを分けます。
なぜ「上下関係」が生まれてしまうのか
多くのシステム開発プロジェクトでは、発注者とシステム開発会社の間に見えない上下関係が生まれます。
発注者は「お金を払う側」であり、システム開発会社は「作る側」であるという認識が、そのまま力関係として表れるためです。この関係性の中では、発注者が要望を出し、システム開発会社はそれを実現することが求められます。
一見すると合理的に見えますが、この前提には大きな落とし穴があります。それは、「要望が正しい」という前提でプロジェクトが進んでしまうことです。
実際には、発注者側の要望は必ずしも最適とは限りません。業務の慣習や過去のやり方に引きずられていることも多く、そのまま実装すると非効率が再現されるだけになります。
【関連記事】
システム開発に最適なパートナー選びの方法を徹底解説!
対等でない関係が引き起こす問題
発注者とシステム開発会社の関係が対等でない場合、いくつかの典型的な問題が発生します。
まず、要件の質が上がりません。
システム開発会社が提案や指摘を控えるようになると、要望はそのまま仕様になります。その結果、本来見直すべき業務や非効率な運用が温存されます。
次に、責任の所在が曖昧になります。
発注者は「言った通りに作られていない」と感じ、システム開発会社は「言われた通りに作った」と考える。この認識のズレがトラブルの原因になります。
さらに、改善の余地が失われます。
対等でない関係では、議論よりも指示と実行が優先されるため、より良い設計にたどり着く機会が減ります。
このように、関係性のあり方がプロジェクト全体の質に直結します。
なぜ対等な関係が必要なのか
システム開発は、業務と技術の両方を理解して初めて成立します。
発注者は業務に精通していますが、システムとしての最適な形を常に把握しているわけではありません。一方で、システム開発会社は技術や設計の知見を持っていますが、業務の細部までは理解していない場合もあります。
この2つの知見を掛け合わせることで、初めて実用性と効率を両立したシステムが生まれます。
つまり、どちらか一方が主導するのではなく、互いの専門性を持ち寄りながら意思決定を行うことが重要です。その前提となるのが、対等な関係です。
「作ってもらう」発想がもたらすリスク
発注者が「システムを作ってもらう」という意識を持っている場合、プロジェクトは受け身になります。
要件定義の段階で十分な議論が行われず、「とりあえず作る」ことが優先されるため、完成後に「思っていたものと違う」という事態が起きやすくなります。
また、完成後の改善も難しくなります。要望を追加するたびにコストが発生し、その都度調整が必要になるため、結果として改善のスピードが落ちていきます。
このような状態では、システムは業務を支えるものではなく、足かせになる可能性があります。
対等な関係を築くためのポイント
では、どのようにすれば発注者とシステム開発会社が対等な関係を築けるのでしょうか。
まず重要なのは、「要望ではなく目的を共有すること」です。何を実現したいのか、どのような課題を解決したいのかを明確にすることで、議論の軸が揃います。
次に、「前提を疑う姿勢」です。既存の業務や過去のやり方をそのまま受け入れるのではなく、本当に必要かどうかを検討することが求められます。
さらに、「意見を言いやすい環境」です。システム開発会社が遠慮せずに提案や指摘を行える関係であることが重要です。
これらが揃うことで、単なる発注・受託の関係から、共に考え、最適解を導く関係へと変わります。
プロジェクト成功の分岐点はどこにあるのか
プロジェクトの成否を分けるのは、技術やツールではありません。
初期段階でどれだけ本質的な議論ができるか、そしてその議論が対等な関係の中で行われているかが重要です。表面的な要望をそのまま実装するのではなく、その背景にある課題を掘り下げ、より良い形に再設計する。このプロセスがあるかどうかが、結果を大きく左右します。
対等な関係が築かれていれば、問題が発生した場合でも建設的な議論が可能になります。一方で、上下関係が強い場合は、問題の責任を押し付け合うだけで終わることもあります。
この違いが、プロジェクトの成果に直結します。
まとめ
システム開発において、発注者とシステム開発会社の関係性は、プロジェクトの成否を左右する重要な要素です。
上下関係の中で進められる開発は、要望の精度を下げ、責任の曖昧さを生み、結果として成果の質を損ないます。
一方で、対等な関係のもとで進められる開発は、業務と技術の知見が掛け合わされ、より良い設計につながります。
重要なのは、「作ってもらう」という発想から脱却し、「一緒に作る」という意識を持つことです。この意識の違いが、システムの価値を大きく変える分岐点になります。
システム開発の成果は、技術や機能だけで決まるものではありません。どのような関係性でプロジェクトを進めるか、その前提によって最終的な品質と価値は大きく変わります。
当社フレシット株式会社では、発注者とシステム開発会社という立場にとどまらず、同じ目線で課題を整理し、最適な形を共に設計することを重視しています。要望をそのまま形にするのではなく、その背景にある業務や意思決定まで踏み込み、本当に必要な仕組みへと落とし込んでいきます。
もし、これからフルスクラッチ開発を進めるにあたり、「どのように作るか」だけでなく「誰とどのように進めるか」を重視されるのであれば、その選択がプロジェクトの結果を大きく左右します。対話を重ねながら一緒に形にしていく開発を検討してみてはいかがでしょうか。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら