【CX-5刷新で見えたマツダの決断】“削る設計”が競争力になる──売上につながるシステムは引き算でつくる
“全部入り”をやめた瞬間、システムは使われ始める
2026-03-29

商品やサービスの競争力は「どれだけ多くの機能を持つか」で決まるわけではありません。むしろ、選択肢が多すぎることが意思決定を遅らせ、結果として売れない状態を生むこともあります。
マツダは新型CX-5においてラインアップを大幅に削減し、「少ない方が売りやすい」という現場の声を戦略に反映しました。この考え方は、業務システム開発にもそのまま当てはまります。本コラムでは、“削る設計”がなぜ競争力につながるのかを、システム開発の観点から解説します。
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目次
【記事要約】マツダの戦略転換、選択肢削減と段階的磨き込みでヒット創出へ
マツダは従来、顧客ニーズに応える姿勢から商品ラインアップを拡大してきたが、米国ディーラーの指摘を契機に、選択肢の多さが販売の障壁になり得ると認識した。そこで新型CX-5では構成を大幅に絞り込み、顧客が気づかない過剰な選択肢を削減することで、販売効率と意思決定のしやすさを高める方向へ転換した。また競争環境においては、他社に先行することよりも、自社の強みを軸に商品力を段階的に磨き上げ、確実に市場で受け入れられる形で投入する戦略を採用する。拙速な展開を避け、時間をかけて完成度を高めることで、持続的な競争力の確保を狙う。
出典:日本経済新聞「Re:road マツダの覚悟(下)新型『CX-5』に復活託す」2026年3月20日付朝刊
ポイントをひとことで
システム開発における本質は、機能を増やすことではなく「意思決定の負荷をどう下げるか」にあります。選択肢が多い状態は一見柔軟に見えますが、現場では判断の遅延や誤りを招き、結果として業務効率も成果も下げます。重要なのは、どの機能が価値に直結し、どれが単なる安心材料に過ぎないかを見極めることです。すべてを実現しようとする投資は分散を生み、使われない部分を増やします。逆に、あえて削る判断は、利用者の行動を揃え、結果の再現性を高めます。システムは網羅性ではなく、迷わせない設計こそが価値を生みます。
機能を増やすほど売れなくなる理由
多くの企業がシステム開発において陥るのが、「要望はすべて実装すべき」という発想です。現場からの声、営業からの要望、過去の運用への配慮。これらをすべて取り込もうとすると、システムは次第に複雑化していきます。
一見すると網羅的で優れたシステムに見えるかもしれませんが、実際には以下のような問題が発生します。
- 画面や操作が複雑になり、使いこなせない
- 入力項目が増え、業務負荷が上がる
- 例外処理が増え、運用ルールが曖昧になる
- 教育コストが増大する
結果として、「機能はあるのに使われない」「一部の人しか使いこなせない」といった状態に陥ります。これは、商品において選択肢が多すぎて購入が決まらない状態と本質的に同じです。
“削る”ことで意思決定が速くなる
マツダが示したのは、「顧客はすべての選択肢を求めているわけではない」という事実です。むしろ、選択肢が整理されている方が、購入の判断はしやすくなります。
これは業務システムでも同様です。利用者が日々行うのは、判断と入力の繰り返しです。その際に選択肢が多すぎると、判断に時間がかかり、ミスも増えます。
たとえば以下のような違いが生まれます。
- 選択肢が多い→毎回迷う/判断が遅い
- 選択肢が絞られている→迷わず進める/処理が速い
つまり、“削る”ことは利便性を下げるのではなく、むしろ業務のスピードと精度を高める施策です。
フルスクラッチ開発における“引き算”の価値
フルスクラッチ開発の本質は、「自由に作れること」ではありません。本当に重要なのは、「不要なものを作らないという判断ができること」です。
パッケージやSaaSでは、あらかじめ用意された機能を前提に業務を合わせる必要があります。一方でフルスクラッチ開発では、業務に合わせて必要な機能だけを設計できます。
ここで差が出るのが、“何を作るか”ではなく“何を作らないか”です。
- 使われない機能を最初から排除する
- 例外的な業務を標準化する
- 運用で吸収できる部分はシステムに持ち込まない
こうした判断ができるかどうかで、システムの使いやすさと運用負荷は大きく変わります。
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要件定義は「足し算」ではなく「選別」
システム開発において、要件定義は最も重要な工程の一つです。しかし多くの現場では、「要望を集める場」になってしまっています。本来の要件定義は、以下のような観点で整理されるべきです。
- 本当に必要な業務か
- 頻度はどれくらいか
- 例外なのか標準なのか
- システムで対応すべきか、人で対応すべきか
すべてを実装対象にするのではなく、「削るべきもの」を見極めることが求められます。このプロセスを経ることで、システムはシンプルで使いやすいものになります。
“削る設計”が売上に直結する理由
業務システムは単なる効率化ツールではありません。意思決定の速さや正確さに影響を与えるため、最終的には売上にも影響します。
たとえば、
- 受注処理が速くなる→機会損失が減る
- 入力ミスが減る→手戻りが減る
- 業務が標準化される→属人化が解消される
これらはすべて、“余計なものがない設計”によって実現されます。
逆に、機能が多すぎるシステムは、処理の遅延やミスの増加を招き、結果として売上機会を逃す原因になります。
“全部入り”から脱却するための視点
最後に、“削る設計”を実現するために必要な視点を整理します。
- 「要望=必要」とは限らない
- 例外処理は極力減らす
- 業務の本質に立ち返る
- 利用者の負担を最優先に考える
特に重要なのは、「誰のためのシステムか」を見失わないことです。現場が使いやすく、迷わず動ける状態をつくることが、最終的な価値につながります。
まとめ
マツダの事例が示したのは、「選択肢は多いほど良い」という常識の見直しです。削ることで顧客の意思決定を助け、結果として売上につなげる。この考え方は、業務システムにもそのまま当てはまります。
フルスクラッチ開発において重要なのは、機能を増やすことではなく、本当に必要なものだけを見極めることです。“削る設計”こそが、使われるシステムを生み、事業の成長を支える基盤になります。
ここまで見てきた通り、システム開発において重要なのは「どれだけ多くの機能を実装するか」ではなく、「何をあえて作らないか」を判断できるかどうかです。現場の要望をそのまま積み上げるのではなく、業務の本質に立ち返り、使われる形に落とし込む。その設計こそが、成果に直結します。
当社フレシット株式会社では、この“削る設計”を前提としたフルスクラッチ開発を強みとしています。単にご要望を形にするのではなく、業務の流れや運用まで踏まえて、本当に必要な機能だけを見極めるところから伴走します。結果として、現場に定着し、継続的に使われるシステムを実現します。
「機能は多いのに使われない」「現場に負担が残る」。そのような状態を避けたいとお考えであれば、一度、自社の業務にとって本当に必要な設計とは何かを見直してみてはいかがでしょうか。その判断のパートナーとして、当社がお力になれれば幸いです。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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