要件定義が失敗する原因は?失敗事例から学ぶ対策を徹底解説
2025-02-21

要件定義とは、システム開発において依頼者の要求や機能、そのほかプロジェクトについてわかりやすくまとめる工程のことを指します。開発者は要件定義を基にして開発を進めるため、プロジェクトが成功するかどうか、依頼者が満足するかどうかは要件定義の良し悪しが重要といえるでしょう。
そのため、要件定義が失敗することでシステム開発自体も依頼者にとって納得のいかないものとなるケースがあります。この記事では、失敗事例を紹介したうえで対策方法まで解説します。これからシステム開発の依頼を考えている方は是非参考にしてください。
目次
要件定義とは
要件定義とは、開発工程に入る前に開発者の視点から要求をまとめ、開発の進め方を決めることです。システム開発会社の立場で開発の目的や必要な技術、予算、予定、機能などを定義づけていきます。
要件定義に際しては、依頼者とシステム開発会社の間で十分な意思疎通をとることが重要です。もし、十分なコミュニケーションをとれていないと、
- 思ったようなシステムにならない
- 予算がオーバーしてしまう
- 開発が遅延する
などのリスクがあるため注意が必要です。
要件定義と似た言葉に要求定義がありますが、要求定義はシステム開発の依頼者が設定するもので要件定義に先行する段階となります。
依頼企業がシステムを依頼する目的や必要な機能、解決すべき課題などを希望としてまとめるため、システム開発会社は依頼者が提出した要求定義を基にして要件定義の作成を進めることが必要です。
また要件定義は、システム開発の依頼者に要件の内容を納得してもらう必要があるため、専門知識のない人が読んでも理解できる内容にすることも重要です。
要件定義がなぜ重要か
要件定義は開発のはじめの段階で行われることが一般的であり、プロジェクトの進行において重要な役割を担います。これは依頼者の要求を基にして適切な解決策を提示し、納得してもらうことが目的です。
システム開発の途中で依頼者の要望と違うことが判明しても、修正には費用や時間がかかるため、依頼者の満足度が下がる可能性もあります。そのため、開発をする前の要件定義が必要不可欠なのです。
要件定義をしなくてもシステム開発は失敗しない?
システム開発において、要件定義は必要不可欠ですが、開発者の手間や工程を減らすために「要件定義をしなくてもいい」と言われることがあります。
しかし要件定義をしないと、開発者が依頼者の要求や現状、導入する目的などを理解できず、依頼者が想定しているようなシステムが出来上がらない可能性が高くなります。
結果的に開発に手直しが必要となり、費用や時間などが余分にかかってしまうのです。こうなれば、システム開発は失敗と言わざるを得ません。
このあと説明しますが、システム開発の失敗においては、要件定義が雑になっているケースが少なくありません。要件定義を丁寧に進めていれば、防げるトラブルがほとんどです。
要件定義を失敗しないための必要な項目
要件定義には、システム開発会社が依頼者の要求を基にシステム開発を進めるために次の項目を含める必要があります。また、場合によってはそれぞれの項目を明確にするための資料を添付する場合もあります。
- プロジェクト概要
- プロジェクトにおける関係者
- システムについて
- 機能要件
- 非機能要件
- ユーザーの使い勝手
- データや運用、制約、移行などの条件
- 保守面での対策
- テスト要件
以下に、それぞれの項目の詳細を説明していきます。
プロジェクト概要
依頼者がシステム開発を依頼する背景や目的などを明確にします。依頼者の現在の業務における課題を業務フローを通して明確にし、システム導入後の業務フローを作成することが一般的です。
開発者がシステム開発が必要になった背景を理解することで、より依頼者の目的を把握しやすくなります。結果として、依頼者がシステムを通して、どのような効果を求めているのかがわかるため、満足度向上につながるのです。
また、システムを導入することで依頼者側の業務・運営体制が変わる場合についても要件定義に含めておくと良いでしょう。プロジェクトについてできる限り詳しく記載しておくことで、依頼者と開発者間の認識の相違を防止することが可能です。
プロジェクトにおける関係者
プロジェクトに関わる関係者の一覧を記載してください。
その際、それぞれ関係者の役割についても詳しく記載してください。
システムについて
システムの全体的なイメージや構成などについて明確にすることが大切です。システムがどのような内容のものであるか、どのような構成で成り立っているのかなどを図などで可視化します。システムを導入したあとの業務フロー図やビジネスフロー図など、依頼者がわかりやすくすることが重要です。
機能要件
ユーザーが求める機能を明確にします。それぞれの機能の目的や特徴、注意点などを記載することが一般的であり、具体的には、システムがどのような処理をするのかを設定すると良いでしょう。
その際、開発者が開発しやすいことだけを考えて機能要件を設定すると、依頼者が利用するときに不満がたまりやすくなるため、依頼者の要求を満たすための機能を含めたり、使いやすさを追及したりすることが重要です。
非機能要件
機能以外のセキュリティや可用性、保守性、パフォーマンスなどの要件を明確にしてください。可用性とはシステムを長期間使うためのものであり、災害時での利用や運用スケジュールが含まれます。また、今後、業務が増えたり内容が変更したりすることを見越したシステムの拡張性も重要な要素です。
このほかに、現在利用しているシステムから新しいシステムに移行する方法や移行量、問題発生時の対応策、不正アクセスをはじめとしたセキュリティ面での対策なども非機能要件に含まれます。
ユーザーの使い勝手
システムをユーザーが使う際、使い勝手がよくないとユーザーの満足度が下がります。そのため、画面の使いやすさ、画面ごとのモックアップやワイヤーフレームについて記載してください。
ユーザーが使う際にどのようなシステムなのか、どのような画面が表示されるのかも非常に重要な観点です。
データや運用、制約、移行などの条件
データフローやインターフェース要件、ほかのシステムとの連携などのデータ要件の明確化が必要です。さらに、リカバリーやリスクに備えるバックアップを含めた運用フロー、現状のシステムからデータを移行する移行要件、予算や日程、技術面などの様々な制約要件の記載も求められます。
保守面での対策
システムを運用するにあたって、様々なトラブルが発生する可能性があります。そこで、システム運用時に考えられるリスクを一覧にしてそれぞれの対策方法を依頼者に知らせることが重要です。
なかでも、セキュリティ要件の記載は重要です。ウイルス感染や情報漏洩、ハッキングなどどのような攻撃を受ける可能性があるのか、どのような対応をできるのかを明確にしておくことで、依頼者の安心感が高まるでしょう。
テスト要件
開発が終わったら、依頼者に納品する前に必ずテストを行います。どのようなテストをするのか項目を記載してください。近年ではシステムを納品する前に、可用性、セキュリティ、運用など様々な観点でテストが実施されるため、どのようなテストをするのか、また、テストをするスケジュールについても記載することが重要です。
要件定義を失敗しないための7ステップ
要件定義の進め方はシステム開発会社によって異なりますが、大まかな流れは次のようになります。
- 要求定義を明確にする
- 開発目的を明確にする
- システムを大まかにイメージする
- 機能要件を定義する
- 非機能要件を定義する
- システム開発に必要なプロジェクトを決定する
- 要件定義を行う
1.要求定義を明確にする
要件定義は依頼者のニーズがつまっている要求定義を基にして進める必要があります。しかし、発注した依頼者がシステムに対して知識があるとは限らず、求められている要求を実現するためには、スケジュール内に開発が終わらない場合やそもそも要求定義の内容が明確でないこともあるため、依頼者のニーズを汲み取った上で要件定義に落とし込んでいく必要があります。
2.開発目的を明確にする
要件定義を明確にしたあとは、依頼者にとっての開発目的を明確にします。要求定義に目的が書かれていることが一般的ですが、依頼者側の要望のみで書かれているため、システム開発会社側の経験や知識を加えて、再度開発目的を明確にすることが重要です。
場合によっては、要求定義に書かれた内容では目的を達成できない可能性があり、違う方法やスケジュールなどの再調整を提案するケースもあります。また、現在の業務フローを明確にすることも重要なため、担当者にヒアリングを行い、課題を洗い出すこともあります。ヒアリングの結果、より効率的に課題を解決できる場合もあるでしょう。
現在の業務フローが出来上がったら、依頼者が求める業務フローを作成し、現在の業務フローと比較をして、開発したシステムを使ってどのように改善するのかを明確にします。
3.システムを大まかにイメージする
要件定義を基に開発目的を明確にしたら、次にシステムの全体的なイメージを依頼者と擦り合わせて決めていきます。
この時点では、詳細を詰めず、あくまで全体的な業務フローやビジネスプロセスなどを可視化していきましょう。
4.機能要件を定義する
システムを大まかにイメージしたあとは、依頼者が要求しているシステム機能を明確にする機能要件を定義していきます。機能要件で定義した内容はシステムを利用する段階での業務効率に関わってくるコアな部分となるため、システム開発において重要な工程です。
設計をする段階でより明確にしていきますが、大まかに機能要件を定義することで必要な機能を明確にできます。搭載する機能によって、開発のスケジュールや必要な人材などが変わることから、開発にかける予算にも関わってきます。
5.非機能要件を定義する
システム開発を進めるにあたって、機能以外に保守面やセキュリティ、ユーザビリティなどの定義が必要です。また、業務処理速度や使い勝手なども満足度に大きく影響します。
なお、近年ではすでに他のシステムを導入しているケースもあるため、他のシステムとの連携も頭に入れておくことが重要です。プロトコルやネットワーク等どのような連携方法をとるか、どのデータ形式を選ぶかなど考えるべきことは少なくありません。
6.システム開発に必要なプロジェクトを決定する
システム開発に必要な機能や開発内容が明確になったところで、スケジュールや予算、人員などを検討します。システムの設計や開発をするために必要な日数や予算、人員などを明確にすることが重要です。
プロジェクトの内容があいまいなままだと、日数や人員の不足や予算が大幅にオーバーしてしまう可能性があるので注意しましょう。
7.要件定義を行う
プロジェクト内容が明確になったら、要件定義を行って依頼者や開発に関わるメンバーと次の点について共有します。
- 現状の課題とシステムによって解決したいこと
- システム全体のイメージ
- 機能や非機能要件
- 予算
- スケジュール
- 担当者
- 依頼者への連絡方法とタイミング
- トラブルが発生した場合の解決方法
何度も擦り合わせをするだけでなく、書面にして可視化することでトラブルの防止につながります。要件定義を基にして設計、開発、実装と進んでいくことが一般的です。
要件定義の失敗事例
さまざまな理由において要件定義を失敗するケースが見受けられます。ここでは、よく起こりがちな失敗事例を紹介しますので参考にしてください。
- 開発者と依頼者の認識のずれがある
- 十分なヒアリングができていない
- 開発チームの体制が十分でない
開発者と依頼者の認識のずれがある
要件定義で失敗する例として最も見られるのが、開発者と依頼者の認識のずれがあるパターンです。この場合、プロジェクトの途中で仕様の変更ややり直しが必要になって費用や時間が想定以上にかかったり、プロジェクトそのものが失敗したりする可能性があります。
システム開発会社は依頼者の要望や現状の業務フロー、開発を進める目的を明確にしたうえで要件を定義することが重要なため、依頼者もただ開発者に全てを任せるのではなく正確な情報を提供したり、細かくチェックしたりするようにしてください。
要件定義を明確にすることで、開発者側と依頼者側の認識のずれを防ぐことができるため手戻り作業をなくし、スムーズな開発ができるようになります。
十分なヒアリングができていない
システム開発を成功させるためには、開発者が依頼者のシステムに求めること、現在の業務フローなどを理解していなければいけません。しかし、経験や勘に頼って開発を進めていると工数を見誤ったり、依頼者側の要望を把握できず手直しが増えたりします。
要件定義の作成時、経験豊富なスペシャリストがヒアリングを行うことで依頼者が求めるシステムを実現化することができます。また、調査期間を十分に設定することも十分なヒアリングを実施するために必要です。
開発チームの体制が十分でない
要件定義が十分であっても、要件定義通りに進められる開発チームの体制がないと意味がありません。また、要求変更があった場合、変更があった情報を素早く共有したり、対応できたりするような体制作りが重要です。
特に、海外人材を活かしたオフショア開発ではスムーズにコミュニケーションをとれるような体制が必要です。開発費用は安く抑えられるかもしれませんが、時差や言語など様々な問題で十分にコミュニケーションをとれていないと、結果的にシステム開発が失敗する可能性があります。
要件定義を失敗をしないための開発会社の見極め方
要件定義はシステム開発において必要不可欠な工程ですが、残念ながら失敗してしまいシステム開発にも影響が出ることがあります。要件定義を失敗しないためにも、依頼する企業にあったシステム開発会社を選ぶことが重要です。
しかし、近年では様々なシステム開発会社があり、どのように見極めるべきか悩ましいところです。そこで、システム開発会社を選ぶ際には、次のポイントを意識していただくとよいでしょう。
- 業務やビジネスモデルの把握力があるか?
- ヒアリング能力があるか?
- 経験豊富か?
まとめ
システム開発を依頼しても思ったような効果がでない、費用がかかりすぎた、時間がかかりすぎたといったことがあります。繰り返しとなりますが、このような失敗を防ぐためには要件定義が大事な要素となります。
依頼者の課題や現在の業務フロー、システム開発の目的などの理解に努めようとするシステム開発会社であることはもちろん、実績豊富であるか、コミュニケーションが十分にとれるかが、システム開発会社を選ぶ上で非常に重要です。
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