運用保守とは?それぞれの違いや外部に依頼する際の注意点についても解説
2025-04-14

企業内で活用される業務システムを始め、オンラインバンキング、ネットショッピングシステムなど、今やあらゆるシステムが我々の日常に浸透し、不可欠なものとなっています。
これらのシステムを適正に見守り、安定稼働を支えている業務が、運用保守です。どのようなシステムであれ、運用保守が適切に行われていないために停止してしまうと、多くの人々が仕事や生活に支障をきたすことになるでしょう。運用保守とはその名の通り、「運用」と「保守」の2つから成り立っていますが、具体的にはどのような業務なのでしょうか。
この記事では、「運用とは何か」「保守とは何か」といった基本知識に立ち返りつつ、それぞれの具体的な業務内容、一般的な費用相場、外部に依頼する際の注意点などについて詳しく解説します。運用保守の外注をご検討されている方は、ぜひ参考になさってください。
目次
運用とは
運用とは、「システムの停止を防ぎ、安定稼働を継続すること」を第一の目的として、システム状況の監視や管理を行う業務です。
システムに異常がないかを常に監視し、稼働ログなどによって状況を正確に把握しながら、トラブルの発生を未然に防ぐための対策を打ちます。そのため運用業務の対象は、システムの核となるソフトウェアやアプリケーションはもちろん、そこで扱われるさまざまなデータから、インフラであるハードウェア・ネットワークまで、幅広い範囲に及ぶことが一般的です。
また、システムへの直接的な関与に限らず、ユーザーサポートなど利便性を高めるための業務をすべて含めて「運用」と呼ぶこともあります。
保守とは
保守とは、「システムの障害を解消し、正常稼働の状態に戻すこと」を第一の目的として、障害発生時の復旧作業やシステムの改修を行う業務です。
基本的に障害は予測が難しく、発生時には突発的な作業が必要となります。さらに、システムの停止は機会損失につながることも多く、少しでも早い復旧が求められます。そのため保守を担うスタッフには、原因究明や修復作業のための高度なスキルやノウハウはもちろん、冷静な判断力や決断力が不可欠です。
運用の具体的な業務
運用の具体的な業務は、主に次の通りです。
- 日常的な定型メンテナンス作業
- システム状況の監視
- サーバーの停止・再起動
- セキュリティ対応
- ソフトウェア更新
以下、順に解説します。
日常的な定型メンテナンス作業
運用業務の1つに、日常的に発生する定型的なメンテナンス作業があります。その内容は、ハードウェアやソフトウェアの定時起動・停止、使用データの入力・出力、定期的なデータバックアップなど、手順書を基にしたルーティンワークが主なものです。
なお、業務システムにおける簡易的な定型メンテナンス作業については、運用担当者ではなく利用部門のメンバーが代行することもあります。
システム状況の監視
システムの状況を監視することも、重要な運用業務の1つです。あらかじめセットアップした監視エージェントなどを活用しながら稼働状況をモニタリングし、異常や不具合を感知します。
監視項目の具体例として挙げられるのは、CPUやメモリの使用率、ハードディスクの使用量・空き容量、ネットワーク帯域の使用率などです。これらを常に監視しながら、必要に応じて措置を講じ、トラブルを未然に防ぎます。
サーバーの停止・再起動
システム上で稼働しているサーバーの停止や再起動を行うのも、運用担当者が行う業務の1つです。
システムが連続して長時間稼働していると、メモリの断片化などが発生し、CPUを始めとしたサーバーの構成要素に高い負荷がかかることがあります。これによりシステムのパフォーマンスが落ちてしまうほか、故障などの発生につながることもあるため、定期的にサーバーの停止・再起動を行うことでトラブルを未然に防ぎます。
セキュリティ対応
サイバー攻撃による情報漏洩やデータ改ざん、ウィルスやマルウェアの感染などを防ぐため、あらゆるセキュリティ対策を講じることも運用業務の一環となります。
セキュリティを脅かす技術は日々進化を続けている上、OSやソフトウェアの新たな脆弱性が明らかとなることもしばしばです。そのため、セキュリティ対応は一度対策を講じたら終わりというものではなく、常に情報をキャッチしながら最新の対策を講じる必要があります。
ソフトウェア更新
不具合を解消したり、ユーザーの利便性を高めたりするために、最新バージョンの公開に伴って定期的にソフトウェアをアップデートすることも、重要な運用業務となります。
特に、上述したセキュリティ対応の要となるウィルスソフトやファイヤーウォールなどのツールに関しては、随時アップデートやパッチの適用を行いながら、常に最新状態に保っておくことが大切です。
保守の具体的な業務
保守の具体的な業務は、主に次の通りです。
- 障害時対応
- 修正システム・プログラムの導入
- データメンテナンス
- ハードウェアのリプレイス
- ネットワークメンテナンス
それぞれについて、以下で解説します。
障害時対応
システムに障害が発生し、停止、パフォーマンス遅延、エラー発生などの事態に陥った際には、正常稼働に戻すための迅速な対応を行う必要があります。これが、保守担当者が受け持つ重要な業務の1つです。
システムの障害は機会損失につながり、ビジネスに大きなダメージを与える恐れがあるため、原因の究明から稼働の復旧、再発防止策の適用まで、一連の作業をスピーディかつ的確に実施しなくてはなりません。
修正システム・プログラムの導入
上述した障害発生時はもちろんですが、ユーザーの利便性に影響を与える不具合や潜在的なバグなどが発覚した際には、それらの不備を解消した修正システムやプログラムを導入しなければなりません。これも、重要な保守業務の1つです。
中には、不備の解消に向けた新たなシステムやプログラムの開発に相応の時間を要するケースもあります。その場合でも、保守担当者が先導してスケジュールなどを計画し、トラブルが発生してしまう前に可能な限り早く導入することが理想です。
データメンテナンス
障害発生など、何らかの原因によってデータが損失したり、内容に不備が発生したりした場合に、整合性の取れたデータの状態に戻すことも保守担当者が行う大事な作業です。
これを適切に実現するには、普段からデータのバックアップを実施し、それが正常に完了していることを都度確認するのと同時に、リストアを行う際の手順やフローを確立しておく必要があります。
ハードウェアのリプレイス
サーバーやネットワーク機器といったハードウェアが故障した際はもちろん、老朽化やサポート切れなどによりトラブルのリスクが高まっている場合には、リプレイスを実施する必要があります。これも、保守担当者が行う業務の1つです。
ハードウェアのリプレイスは一朝一夕で完了するものではないため、明確なスケジュールや作業フローを構築の上、計画的に行うことが重要といえます。
ネットワークメンテナンス
リプレイスした新たなネットワーク機器が安定的に稼働するには、さまざまな設定値などを適切に調整する必要があります。また、サーバーや周辺装置をリプレイスした際にも、そのパフォーマンスが最大化されるよう、ネットワークをメンテナンスしなければなりません。
上述したハードウェアリプレイスの一環となるこのような作業に加え、普段の運用状況に鑑みた日常的なネットワークのメンテナンスも、大切な保守業務の1つです。
運用保守を依頼する際の費用相場
一般的に、1年間にかかる運用保守費用の相場は、システム開発費用の10〜15%程度といわれています。例えば、300万円かけて開発したシステムの運用保守費用は、年間で30万〜45万円程度が目安です。
ただし運用保守費用は、対象となるシステムの規模や内容によって大きく変わります。運用保守費用の多くを占めるのはスタッフやエンジニアの人件費です。複雑で高度なシステムになるほど高いスキルやノウハウを持った人材が求められる上、大規模なシステムでは多くの人数が必要となるため、想定以上に運用保守費用が高くなるケースもあります。
つまり、実際の運用保守費用を把握するには、対象となるシステムで求められるスキルレベルや人数を慎重に見積もることが重要です。
運用と保守は同一スタッフに任せるべきか?
運用と保守は密接に関連している上、その違いや切り分けが明確でないことも少なくありません。運用担当者が保守業務と思われる範囲をカバーしたり、逆に保守担当者が運用業務を行ったりすることもあります。
そのため、運用と保守を別のスタッフが担当すると、作業が漏れたり、オーバーヘッドと呼ばれる余計な手間や無駄な負荷が発生したりする恐れがあります。可能な限り同一スタッフで行うことが、スムーズで安定的な運用保守を実現するためのポイントといえるでしょう。
やむを得ない事情により双方を別のスタッフが担当する場合には、それぞれの業務内容やカバー範囲を明確にし、文書化しておくなどの配慮が必要です。
運用保守の担当を変えるべきタイミング
主に次のようなタイミングで、運用保守を行う担当者を変えるのが賢明といえるでしょう。
- 現担当者のスキルやノウハウが十分でないと感じるとき
- システムの品質を底上げしたいとき
- 高度な専門知識が必要になったとき
- コアビジネスへの集中投資が必要なとき
- 費用対効果が低いと感じるとき
- リスク管理やセキュリティ対策を強化したいとき
これらを総合的に考慮すると、ビジネスの成長や組織の変革に伴い、現状ではスムーズな対応が難しくなった場合に運用保守の担当を変えるのが良いといえます。
特に、システムの品質を底上げしたいケースや、高度な専門知識が必要になったケースでは、プロフェッショナルである外部の専門業者に委託することも有効な手段の1つです。
また、コアビジネスへの注力が求められ、自社のリソースをそちらに集中投資したい際にも、運用保守の外部委託が効果的な選択肢となるでしょう。
運用保守を外部に依頼する際の流れ
システムの運用保守を外部に依頼する際の基本的な流れは、次の通りです。
- 運用保守の範囲や要件を定める
- 依頼する業務と自社で担う業務を明確にする
- 見積もりを取得する
- 諸条件を定めて契約する
まずは運用保守の業務範囲や、システムを安定的に稼働させるための要件をしっかりと定めることが大切です。その際、外部業者に担ってもらう業務と、自社で行わなければならない業務を明確に区分けしておくことも忘れないようにしましょう。それらの情報を基に見積もりを依頼し、料金などの諸条件で双方の合意を得ることができれば契約を締結します。
また、契約後、実際に運用保守業務がスタートしてからは、定期的な報告を受けながらシステム状況や課題を常に共有し、より優れたシステムの実現に向けて協力し合うことが重要です。
運用保守を依頼するべき会社を見極めるコツ
運用保守を依頼するべき会社を見極めるには、まずはWebサイトを中心に情報を収集し、類似システムの運用保守経験が豊富にあるかどうかを確認することが重要です。公開されている情報だけでは分からない場合、先方の担当者から直接ヒアリングするなど、相応の手間をかけることをおすすめします。
その上で、最低でも3社、可能であれば5社以上の会社から見積書を取得し、慎重に比較検討する必要があります。
その際、注目すべきは金額だけではありません。
ビジネスへのスタンスが見積書に表れることも多いため、明細項目は要件を的確に網羅しているか、金額の根拠や作業の内容は明快になっているかなどを細かくチェックします。それらも含めて総合的に判断の上、運用保守を担うパートナーとしてしっかりと伴走してくれるかどうかを見極めましょう。
運用保守を外部に依頼する際の注意点
運用保守を外部に依頼する際、必ず押さえておくべき注意点は次の通りです。
- 類似システムの運用保守経験がない
- 技術力に不安がある
- 保守やサポートの体制が十分でない
- やり取りのレスポンスが遅い
- 見積書の内容や書き方に誠意を感じない
これ以外にも、自社の予算と見積金額の兼ね合いはもちろん、やり取りに応じてくれた担当者との相性などがポイントになることもあるでしょう。いずれにせよ、上述した通り、可能な限り多くの会社を比較検討した上で、慎重に判断する必要があります。
運用保守を外部に依頼した際のトラブル事例
運用保守を外部に依頼した際に発生しがちなトラブル事例には、次のようなものがあります。外部委託を検討する際には、これらを念頭に置いておくと良いでしょう。
- 不明瞭な見積もりで契約してしまったため、想定外の追加料金を請求される
- 最も安い金額を提示した外部業者に依頼したが、経験不足のために満足するサポートが得られない
- 外部業者の技術力が十分でなく、トラブルの復旧に相応の時間がかかる
- 要件を明確に定めないまま進めてしまったため、必要な作業に対応してくれず自社でやる羽目になった
まとめ
システムの稼働を安定させ、長期にわたって有効活用するには、適切な運用保守を実現する必要があります。まずは運用保守の業務内容を理解の上、自社のシステムに見合ったリソースやコストを慎重に見積もりましょう。
また、運用保守を外部業者に依頼する場合は、本コラムで紹介したコツやポイントを押さえながら、最適な会社をしっかりと見極めることが重要です。
最後になりますが、初期のシステム開発から運用保守までを一貫して任せられる開発パートナーをお探しの方は、フレシット株式会社にぜひご相談ください。
私たちは、業務やビジネスに深く寄り添うヒアリングを通じて、フルスクラッチ(オーダーメイド)での柔軟なシステム構築を実現し、リリース後も運用保守の実務を見据えた“現場目線のサポート体制”を強みとしています。
システムの安定稼働はもちろん、将来的な事業拡張や改善にも対応できる運用設計を得意としており、技術力と対応力の両面で「任せてよかった」と感じていただける体制を整えています。
安心して長く付き合えるシステム開発会社をお探しの方にとって、最適なパートナーとなるはずです。
監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。