三井住友海上の「情報の一元管理」に学ぶ、SaaSとフルスクラッチ開発の最適解とは?
SaaSとフルスクラッチ開発の違いとは? 企業成長を支えるシステム選定の視点
2025-02-28

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、企業の情報管理のあり方が大きく変わっています。三井住友海上火災保険が採用管理の効率化を目的に、求職者の情報を一元管理するシステムを構築したように、「情報の分散を防ぎ、一元管理すること」 は、業務の効率化や意思決定のスピード向上に直結します。
企業が情報の一元管理を実現する方法として、既存SaaSを活用するか、フルスクラッチで独自システムを構築するか という2つの選択肢があります。どちらを選ぶべきかは、企業のビジネスモデルや業務フローによって異なります。本コラムでは、それぞれのメリット・デメリットを比較し、自社に最適な選択肢を見極めるポイントを解説します。
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目次
【記事要約】三井住友海上、仲介を介さず直接中途採用を拡大
三井住友海上火災保険は、中途採用における仲介業者の利用を減らし、直接採用を拡大する戦略を進めています。同社は、過去の応募者やイベント参加者などから得た情報を一元管理するデータベースを立ち上げ、求職者に直接情報を発信することで、仲介業者を介さずに採用比率を現在の2割から将来的には5割へ引き上げる計画です。
このシステムにより、求職者は自ら情報を閲覧し、希望するタイミングで応募することが可能になります。このアプローチにより、求職者とのミスマッチを減少させ、効率的な人材確保を目指しています。
出典:日本経済新聞「三井住友海上、仲介通さず中途採用拡大求職者情報を一元管理」2025年2月21日付朝刊
ポイントをひとことで
企業が情報の一元管理を進める際、既存SaaSを活用するか、フルスクラッチで独自システムを構築するかは慎重に検討すべきポイントです。SaaSは導入が迅速で低コストですが、カスタマイズの限界やデータ連携の課題があります。一方、フルスクラッチ開発は業務フローに最適化できますが、初期投資と運用負担が発生します。選択の鍵は、自社の業務特性や成長戦略にどれだけフィットするかです。将来的な拡張性と業務効率を考慮し、最適な選択を行うことが重要です。
情報の一元管理とは? 企業が直面する「情報の分散」問題
情報の分散とは、企業が業務で利用するデータが、部門ごとに異なるツールやシステムで管理されており、必要な情報にアクセスするのが難しくなっている状態 を指します。
例えば、営業部はCRM、マーケティング部はマーケティングオートメーションツール、人事部は採用管理システムといった具合に、それぞれが異なるSaaSを利用しているケースが多く見られます。これにより、次のような問題が発生します。
- データの重複や整合性の欠如(同じ顧客情報が異なるシステムに登録され、更新が同期されない)
- 業務の属人化(特定のツールを理解している社員がいないと業務が進まない)
- 情報の可視化が困難(各部門のデータを統合しないと全体像が見えない)
こうした課題を解決するために、一元管理システムの導入が求められています。 では、既存SaaSを活用するのと、フルスクラッチで開発するのでは、どのような違いがあるのでしょうか?
既存SaaSを活用するメリット・デメリット
メリット
✅ 導入がスピーディー:既存のSaaSは、アカウントを作成すればすぐに使い始められます。
✅ 初期コストが低い:開発費用が不要で、月額課金モデルで利用可能です。
✅ 機能の充実度:CRM、ERP、会計ソフトなど、多くの業務に特化したSaaSが存在します。
デメリット
❌ カスタマイズの限界:既存SaaSは多くの企業に対応するよう設計されているため、自社の業務フローに完全に適合しないことがあります。
❌ データ連携が難しい:異なるSaaS同士を連携する場合、APIの制限や仕様の違いにより、思ったようなデータ統合ができないことがあります。
❌ ランニングコストが増える:月額費用が発生するため、長期的に見るとコストが増大するケースもあります。
フルスクラッチ開発(独自の一元管理システム)のメリット・デメリット
メリット
✅ 業務フローに完全適合:自社の業務プロセスに最適化されたシステムを構築できるため、業務の効率化が最大化されます。
✅ データの一元管理が可能:必要なデータをすべて統合し、リアルタイムで活用できます。
✅ セキュリティと拡張性:自社のポリシーに沿ったセキュリティ対策を施し、将来的な拡張にも対応できます。
デメリット
❌ 開発コストと期間がかかる:ゼロからの開発となるため、一定の初期投資と開発期間が必要です。
❌ 運用保守の負担:自社でシステムを運用保守するため、ITリソースが必要になります。
❌ 仕様変更が必要な場合の対応:業務プロセスの変化に伴い、システムの改修が必要になる可能性があります。
SaaSかフルスクラッチか? 自社に最適な選択肢を見極めるポイント
どちらを選択すべきかは、企業の規模や業務プロセス、求めるシステムの柔軟性によって異なります。以下の基準を参考に、自社に最適な選択肢を検討しましょう。
SaaSを選ぶべき企業
✅ 初期費用を抑えつつ、すぐに利用開始したい
✅ 既存のSaaSで業務プロセスをカバーできる
✅ システム開発や運用保守のリソースを確保できない
フルスクラッチ開発を選ぶべき企業
✅ 企業独自の業務プロセスに最適化したシステムが必要
✅ 部門横断でのデータ一元管理を実現し、業務の生産性を最大化したい
✅ 長期的な視点でシステムの柔軟性や拡張性を重視する
まとめ:情報の一元管理が企業の競争力を左右する
三井住友海上火災保険のように、情報の一元管理を進める企業は増えています。企業が成長し、ビジネスの規模が拡大するにつれ、データの分散がもたらす非効率は無視できなくなります。
- 既存SaaSは導入が早く、コストを抑えやすいが、カスタマイズの限界がある
- フルスクラッチ開発は業務に最適化できるが、開発コストや運用負担がある
- 自社の業務に合った選択肢を見極め、将来の成長を見据えたシステム構築を行うことが重要
自社にとって最適な情報管理の方法を選択し、競争力のある業務基盤を構築しましょう。
最後になりますが、フレシット株式会社では、フルスクラッチ(オーダーメイド)で貴社に最適な業務基盤を構築する伴走型のシステム開発の提供を行わせていただいております。
下記よりお気軽にご相談ください。
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<著者プロフィール>
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。