受託開発とは?依頼の流れやメリット・デメリットを徹底解説
2025-04-15

近年、企業のDX推進や業務効率化のニーズの高まりから、システム開発の需要が急速に拡大しています。しかし、自社内に開発リソースを持たない企業や、専門性の高いシステム開発を必要とする企業にとって、システム開発は大きな課題といえるでしょう。困ったときは「受託開発」を検討し、自社の課題やニーズに合わせたシステムを専門家に作ってもらうことがおすすめです。
本コラムでは、受託開発とは何か解説しながら、依頼の流れやメリット・デメリットについても紹介していきます。理想的な受託開発会社の選び方にも触れているので、ぜひご参考にしてください。
受託開発とは
受託開発とは、企業が外部の専門業者にシステムやソフトウェアの開発を委託すること、および委託による開発手法そのものを指す言葉です。
クラウドサービスなど、すでにパッケージ化されたシステムを導入する場合と異なり、完全に自社専用のオーダーメイドシステムを作ってもらえることが魅力として広がりました。受託開発に強い会社はシステム開発に関する専門知識を有しており、要件定義から実際の設計・開発・テストまで一気通貫型でサポートしてくれるのがポイントです。場合によってはその後の運用保守まで任せることができるので、頼もしい存在となるでしょう。
自社開発との違い
受託開発と自社開発は、システムやソフトウェアの開発における根本的なアプローチが異なるので注意しましょう。
自社開発では、「自社のために自社がシステムを開発」します。自社で開発したシステムをパッケージ化して外部に販売するビジネスモデルを採用していることが多く、いかに広範囲な顧客に対してアプローチできるシステムを開発できるかが鍵となります。
一方、受託開発では「クライアント企業のためにシステムを開発」します。特定のクライアントの課題にフィットする、オーダーメイドのシステムを作るビジネスモデルといえるでしょう。パッケージシステムがフィットしない場合や、自社の課題に合うシステムを作り上げたいときに役立つ手法です。
SESとの違い
SES(=System Engineering Service・システムエンジニアリングサービス)とは、ITエンジニアが顧客企業に常駐し、技術的な支援を提供するサービスです。受託開発もSESも「クライアント企業のためにシステムを開発」するという点では同じですが、開発のスタイルが異なります。
SESの場合、クライアント企業のオフィスにエンジニアが常駐し、システム開発を担当します。つまり、自社のオフィスに外部のエンジニアが来てくれるので、シームレスなコミュニケーションをとることができます。反面、デスクの準備やセキュリティーキーの貸与が必要であること、また、自社にエンジニアリングのノウハウが全くない場合にはあえてエンジニアを呼び寄せる必要がないことに注意が必要です。また「準委任契約」となるため、エンジニアの労働力自体に費用を支払うこともポイントです。
一方、受託開発では外部の企業にシステムの開発を依頼することになるため、完成品の納品を待つ形式となります。自社のオフィスに外部のエンジニアが常駐することもありません。こちらは「請負契約」となるため、エンジニアの労働力ではなく完成品そのものに対して費用を支払うということもポイントです。
受託開発のメリット
ここでは、受託開発のメリットを解説します。なぜ受託開発が幅広く受け入れられているのか、理由を探ってみましょう。
外部の専門知識を活用できる
受託開発会社は開発に関するノウハウが豊富で、最新の技術や知識を活用した開発が可能です。優秀なエンジニアを安定して確保していること、開発実績が多いためオーダー通りのシステムにしてもらいやすいこともメリットといえるでしょう。
結果、自社に専門知識や技術者がいない場合でも、高度なシステムやソフトウェアを開発できます。セキュリティやパフォーマンスに関する指導もしてくれるなど、サポートの手厚い受託開発会社であればより安心です。
開発リソースを確保できる
受託開発は企業が外部の専門業者にシステムやソフトウェアの開発を委託する形態であり、開発リソースを確保できるというメリットがあります。自社で開発チームを組織する必要がなく、人材採用や育成に時間やコストがかかりません。必要な時に必要な分だけリソースを確保できるため、柔軟な開発体制を構築できることも魅力です。
IT人材不足が深刻化する中、自社で必要なスキルを持つ人材を確保することは困難です。受託開発を利用しながら、必要なスキルを持つ人材を必要な時に確保していきましょう。
開発期間とコストを削減できる
自社で開発するより、専門性の高い受託開発会社に依頼した方が、開発期間とコストを削減できるケースも多いです。効率的な開発プロセスの導入やコストパフォーマンスの良い開発手法などにも詳しく、無駄なコストがかかりません。受託開発会社であれば必要なスキルを持つエンジニアをすぐに確保できるため、人材採用や育成にかかる時間も削減できます。
結果、プロジェクト開始までの時間を短縮し、開発期間全体も短くなるでしょう。早めにシステムを完成させたいときにも、受託開発会社の活用がおすすめです。
受託開発のデメリット
受託開発には多数のメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、受託開発のデメリットについて解説します。
コストがかかる
受託開発として外部の専門会社にシステム開発を依頼する場合、当然ながら依頼費用がかかります。特に高度な技術や専門知識が必要なプロジェクトや、大規模システムの開発など期間・工数がかかるプロジェクトの場合、費用も高額になるでしょう。プロジェクトの進捗管理、品質管理、リスク管理など、プロジェクトを円滑に進めるための管理業務にもコストがかかります。
自社にある程度ノウハウがあれば、自社開発した方が安いかもしれません。とはいえ、ノウハウがない企業にとっては、自社開発のハードルは高く、逆にコストが増加する恐れもあるため、外注した場合とコスト比較を慎重にシミュレーションする必要があります。
自社に開発ノウハウが蓄積されない
受託開発のデメリットとして、自社に開発ノウハウが蓄積されない点が挙げられます。外部の専門業者にシステムやソフトウェアの開発を委託するため、開発プロセスや技術的な知識が社内に蓄積されません。システム開発の企画、設計、開発、テスト、運用保守といった一連のプロセスを全て外注してしまえば、楽な反面、自社の学びにはならないのです。
いずれ自社開発できるようになりたくても、受託開発に頼っている限り、道のりは遠いものとなるでしょう。開発に使用される技術やツール、開発手法などが社内で共有されないため、技術的なブラックボックス化が生じる恐れもあります。
依頼先によってはコミュニケーションが取りづらくなる
開発チームが遠隔地にいる場合、対面でのコミュニケーションが難しく、意思疎通がスムーズにいかないことがあります。海外のシステム開発会社に依頼する場合は、文化や言語の違いがコミュニケーションの壁となることもあるでしょう。特に細かなニュアンスや自社の企業理念などが伝わらない場合、誤解や認識の齟齬が生じやすくなります。
コミュニケーションがスムーズな受託開発会社であれば、問題ありません。いかに相性の良い受託開発会社を選定するかが、成功の鍵となります。
受託開発を依頼する流れ
受託開発の依頼は、以下の流れで進みます。ステップ式で解説するのでご参考にしてください。
1.目的と要件の明確化
まずは「なぜシステムを開発するのか?」という目的意識を明確にして、どんなシステムがほしいか可視化しましょう。業務効率化、新規事業創出、顧客満足度向上など、システム開発の目的を具体的に定義します。目的が明確ではないとどんなシステムがほしいかも見えづらくなり、プロジェクトの方針が定まりません。
また、業務時間〇%削減、売上〇%向上、など具体的な数値目標を設定すると、開発の成功を評価しやすくなります。顧客向けのシステム開発をしたいときは、ターゲットユーザーを明確にし、ユーザーのニーズや利用シーンを想定することも大切です。
2.予算とスケジュールの設定
開発にかけられる予算の上限を明確にする他、システムのリリース時期や必要な機能の提供時期など、目標となる期日を設定します。
予算について考えるときは、開発費用だけでなく運用保守費用・ライセンス費用なども含めた総費用を把握することが大切です。開発中に予期せぬ事態が発生する可能性を考慮し、予備費を設けておけば、予算を大幅に超えてしまうこともありません。
困ったときは受託開発会社への相談・見積りを繰り返しながら、おおよその相場を把握することがおすすめです。
3.受託開発会社の選定
おおよその方針が決まったら、受託開発会社を選定しましょう。まずはインターネット・紹介・展示会などで情報収集を行い、候補となる開発会社をリストアップします。候補となるシステム開発会社に問い合わせ、相談や見積りを経て自社のニーズに合った会社を絞り込みます。
選定の際は、実績・コミュニケーション能力・プロジェクト管理能力・開発体制・コスト・会社の安定性などを指標にすることがおすすめです。
4.見積り・契約
見積りを取得して、納得できる受託開発会社が見つかれば契約へ進みます。開発費用、人件費、使用するソフトウェアやハードウェアの費用、テスト費用、運用保守費用など、すべての項目が明確に記載されているかを確認しましょう。各項目の費用が市場相場と比べて妥当であるか検討し、問題なければ契約へ進みます。
契約書の内容をよく確認し、契約範囲、納期、費用、著作権、秘密保持義務などを明確にすることも大切です。特に、仕様変更や納期遅延に関する条項は注意しましょう。
5.要件定義と設計
要件定義とは、開発するシステムに求められる機能や性能、目的などを明確にする作業です。依頼者とシステム開発会社が協力して、システムの全体像を具体的に定義します。システムに必要な機能を洗い出し、それぞれの機能について詳細な要件を決めていけば、プロジェクトの方針がブレることもありません。
また、レスポンス速度や処理能力などシステムの性能や、セキュリティ・信頼性・保守性など、機能以外の要件を定義することも大切です。要件定義書や基本設計書に内容をまとめ、いつでも振り返れるようにしておきましょう。
6.開発とテスト
開発フェーズでは、設計書に基づいてプログラマーがコードを記述し、システムを構築します。受託開発の場合、実際の開発はほぼ依頼先企業のエンジニアに任せることになりますが、定期的なミーティングを設けるなど、情報共有は綿密に行いましょう。開発チームと依頼者との間で密なコミュニケーションを取り、認識の齟齬がないように注意します。
7.システム納品・検品
システムが納品されたら、依頼者が納品されたシステムが契約内容と要件を満たしているか、不具合がないかなどを確認します。実際の利用環境に近い環境で、システムが正常に動作するか、機能要件や非機能要件を満たしているかなどをテストしてみましょう。検収中に不具合が見つかった場合は、開発会社に修正を依頼します。
システム納品・検収は、開発プロジェクトの最終確認であり、システムの品質を保証する重要な工程です。慎重に進め、問題がないことを確認してから検収完了としましょう。
8.運用保守
システムが納品されたら、いよいよ自社での運用保守が始まります。システムの稼働状況や性能を定期的に確認し、問題の早期発見や予防ができるよう対策しておきましょう。システムの稼働状況を24時間体制で監視し、異常発生時に迅速に対応できるよう、事前に社内制度を構築しておくことも重要です。
運用保守まで一気通貫型でサポートしてくれる受託開発会社もあります。システムの長期的な安定稼働と価値最大化を図りたいときは、トータルでの外注も検討してみましょう。
受託開発会社の選び方
ここでは、理想的な受託開発会社の選び方を解説します。数多く存在する受託開発会社の中で、どこが一番自社に合うか迷ってしまったときは、以下をご参考にしてください。
過去の実績
受託開発会社を選ぶ際、「過去の実績」は非常に重要な判断材料となります。過去の実績を確認することで、システム開発会社の技術力、経験、信頼性などを把握し、自社のプロジェクトを安心して任せられるかどうか判断することができます。
開発会社のWebサイトには、過去の開発事例や実績が掲載されていることが多いです。具体的な事例を確認し、自社の開発内容に近い実績があるかどうかを判断しましょう。また、システム開発会社に直接、過去の開発実績を確認する方法もおすすめです。
専門分野・技術力
Webシステム・スマートフォンアプリ・組み込みシステムなど、開発会社が得意とする開発領域を確認しましょう。また、AI・IoT・クラウド・セキュリティなど、高度な専門知識が必要な開発の場合、専門知識を持つ受託開発会社を選ぶ必要があります。自社が希望する開発内容と、受託開発会社の得意領域が合致しているかどうかも確認することが重要です。
その他、システム開発会社が使用しているプログラミング言語・フレームワーク・データベースなどを確認し、最新の技術やトレンドに対応しているか確認する方法もあります。
開発体制
エンジニアの質や人数を確認し、プロジェクト規模に合った開発体制がある受託開発会社を優先します。プロジェクトマネージャー、システムエンジニア、プログラマー、テスターなど、必要な役割のエンジニアが揃っているかを確認しましょう。また、チームメンバーの人数や構成が、プロジェクトの規模や内容に適しているかどうかも重要です。
受託開発会社が採用しているプロジェクト管理ツールを調べ、自社でも導入するなど、スムーズなコミュニケーションを叶える歩み寄りも検討します。
コミュニケーション能力
開発会社と依頼者の間で円滑なコミュニケーションが取れるかどうかは、プロジェクトの進行、品質、最終的な成果物に大きく影響します。「開発の進捗状況を定期的に共有してくれるか」「報告の頻度や方法がスマートか」など、コミュニケーションに違和感がないかチェックしましょう。
また、営業担当者だけでなく実際の開発を担当するエンジニアやプロジェクトマネージャーとも事前に話しておき、専門性が高そうか確認することもおすすめです。
コスト
受託開発開発による見積りが、自社の予算の範囲内に収まっているか確認します。時には複数の受託開発会社から見積りを取得し、コストの相場を把握してみてもよいでしょう。見積りの内訳を細かく確認し、各項目の費用が相場に合っているかも検証します。
また、開発途中で仕様変更があった場合や、想定外の作業が発生した場合の追加費用について確認しておきましょう。着手金、中間金、成功報酬など、支払い条件もチェックするなど、事前の相談が欠かせません。
まとめ
受託開発とは、企業が外部の専門業者にシステムやソフトウェアの開発を委託する形態です。自社のニーズに合わせたシステムを構築できる一方で、開発ノウハウが蓄積しにくい、コミュニケーションが取りづらいなどのデメリットも存在します。
システム開発の目的、必要な機能、期待する成果などを具体的に定義し、信頼できる開発会社を選定しましょう。
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監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。