システム開発をフルスクラッチで成功させるために──「システム化の費用」を正しく捉えるという視点
その見積り、本当に“システム化の全体像”を含んでいますか
2025-12-24

システム開発を検討する際、多くの事業会社のご担当者さまが最初に意識するのは「開発費はいくらかかるのか」という点ではないでしょうか。しかし、プロジェクトが進行するにつれて、「想定外の費用が発生した」「聞いていなかった作業が必要になった」と感じた経験をお持ちの方も少なくありません。
こうした問題の多くは、「システム化に必要な費用=ソフトウェア開発費」という認識から生じます。実際には、システムを安定して稼働させ、業務に定着させるためには、開発以外にもさまざまなコストや作業が必要です。本コラムでは、フルスクラッチ開発を成功させるために欠かせない「システム化実現の費用」の正しい捉え方について、実務の視点から解説します。
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目次
【要約】IT化の原理原則[6]システム化実現の費用はソフトウェア開発だけではない
システム化に必要な費用は、ソフトウェア開発費用だけに限定されるものではありません。インフラ整備、既存システムからの移行、周辺システムとの連携対応、利用者への教育、運用・保守体制の構築など、多岐にわたる要素を含めて検討する必要があります。これらを見落としたまま見積りや計画を進めると、後工程で追加費用や役割認識の齟齬が生じ、プロジェクト全体の不安定化につながります。そのため、発注者と受注者は、依頼範囲や責任分界を明確にし、見積りに含まれる作業内容と根拠を共有することが重要です。また、要件定義の段階から運用・保守を見据えた計画と体制を整えることが、長期的に安定したシステム運用を実現する鍵となります。
出典:独立行政法人情報処理推進機構
『超上流から攻める IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
『実務に活かす IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
「IT化の原理原則17ヶ条」が教える、IT導入を成功へ導くための基礎知識
IPAが公開する「IT化の原理原則17ヶ条」は、企業がIT導入やシステム開発を円滑に進めるための基本的な考え方を整理した指針です。ユーザー企業とシステム開発会社の視点の違い、要件定義の重要性、コミュニケーション不足が招く問題など、実務で起こりやすい課題を原理的に示している点が特長です。また、開発プロセスにおける責任や役割の明確化、投資判断の妥当性、品質確保への姿勢など、プロジェクト成功に必要な視点を包括的に提示しています。これらの原理原則を理解することで、組織が主体的にIT化を推進し、失敗しにくい体制を整えることができるようになります。
出典:独立行政法人情報処理推進機構
『超上流から攻める IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
『実務に活かす IT化の原理原則 17ヶ条』原理原則[1]
ポイントをひとことで
このコラムは、システム開発の失敗要因が「開発費の多寡」ではなく、「費用の捉え方の偏り」にあること示しています。ソフトウェア開発だけを見積りの対象とすると、インフラ整備やデータ移行、運用保守といった重要な要素が後回しになり、結果として想定外の負担が発生します。重要なのは、システムを作る工程だけでなく、使い続ける前提で全体を見通す視点です。要件定義の段階からライフサイクル全体を見据えることが、安定したシステム運用と投資対効果の最大化につながります。
システム化の費用は「作る費用」だけでは終わらない
システム開発の見積りを見ると、「設計」「開発」「テスト」といった項目が中心に並ぶことが一般的です。そのため、システム化にかかる費用をソフトウェア開発の対価として捉えてしまいがちです。しかし、これはシステム化全体の一部に過ぎません。
実際のプロジェクトでは、システムを使える状態にし、使い続けられる状態を維持するために、さまざまな付帯作業が発生します。これらを見落としたまま計画を立てると、後から追加費用や役割分担の認識ズレが発生し、プロジェクト全体に影響を及ぼします。
見落とされやすい「システム化実現コスト」の代表例
システム化の費用を正しく捉えるためには、どのような作業が存在するのかを具体的に理解することが重要です。
インフラ整備・環境構築にかかる費用
フルスクラッチ開発では、システムを動かすための基盤となるインフラ設計が欠かせません。サーバー構成、ネットワーク設定、クラウド環境の選定などは、システムの性能や拡張性、セキュリティに直結します。これらはソフトウェア開発とは別の検討・構築作業として発生します。
既存システムからの移行コスト
新しいシステムを導入する際、多くの場合は既存システムやExcel、紙運用からのデータ移行が必要です。データの整理やクレンジング、移行手順の検証などは想像以上に工数がかかり、軽視すると大きなトラブルにつながります。
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周辺システムとの連携対応
会計システム、基幹システム、外部サービスなど、他システムとの連携が必要なケースも少なくありません。インタフェース設計や連携テストには専門的な検討が必要であり、これもシステム化費用の一部として考える必要があります。
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ユーザー教育・定着支援
システムは作って終わりではありません。実際に使う現場の担当者が理解し、日常業務で活用できる状態を作ることが不可欠です。操作説明、マニュアル作成、問い合わせ対応など、教育や定着支援に関わる作業も重要なコスト要素です。
運用保守を見据えないシステムは長続きしない
システムは稼働してからが本番です。運用フェーズでは、障害対応、定期的なメンテナンス、セキュリティ対応、法改正への対応など、継続的な作業が発生します。これらを想定せずにシステムを構築すると、運用開始後に想定外の負担が発生します。
要件定義の段階から「誰が」「どこまで」「どのように」運用保守を行うのかを整理しておくことで、システムの安定稼働と長期的なコストコントロールが可能になります。
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発注者とシステム開発会社の役割分担を明確にする重要性
システム化に関わる費用や作業範囲が曖昧なまま進むと、「そこまでやるとは思っていなかった」「それは対象外だと思っていた」といった認識のズレが生じやすくなります。
発注者側は、自社で対応する作業と外部に依頼する作業を整理し、依頼範囲を明確に提示する必要があります。一方、システム開発会社側も、見積りに含まれる作業内容や前提条件を丁寧に説明する責任があります。双方がこの点を意識することで、不要なトラブルを防ぐことができます。
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フルスクラッチ開発だからこそ費用構造の理解が重要
フルスクラッチ開発は、業務に最適化されたシステムを構築できる反面、自由度が高い分、検討すべき範囲も広がります。そのため、「どこまでがシステム化の対象なのか」「どこからが業務側の対応なのか」を整理せずに進めると、費用や工数が膨らみやすくなります。
フルスクラッチ開発を成功させる企業は、開発費だけでなく、システムライフサイクル全体を見据えた視点で投資判断を行っています。
システム化費用を正しく捉えることがプロジェクト成功につながる
システム化に必要な費用を正しく理解することは、単にコストを把握するためではありません。どこにお金と労力がかかるのかを理解することで、優先順位を整理し、無理のないプロジェクト計画を立てることができます。
結果として、想定外の追加費用や認識ズレを防ぎ、事業にとって価値のあるシステムを構築することにつながります。
まとめ
システム化の費用は、ソフトウェア開発だけで完結するものではありません。インフラ整備、データ移行、周辺システム連携、ユーザー教育、運用保守といった多様な要素を含めて初めて、システムは実務で機能します。これらを正しく捉え、発注者とシステム開発会社が役割と範囲を共有したうえで進めることが、フルスクラッチ開発を成功に導くための重要な前提となります。システムを「作る」だけでなく、「使い続ける」視点を持つことが、事業成長を支えるシステム化への第一歩です。
フレシット株式会社は、要件定義の段階からシステムライフサイクル全体を見据え、どこまでをシステムで担い、どこを業務で補うのかを整理しながら設計することを強みとしています。フルスクラッチ開発ならではの柔軟性を活かし、事業の成長に合わせて拡張できる構成や、運用フェーズまで破綻しない現実的な体制づくりを重視しています。システムを「作ること」だけで終わらせず、長く使い続けられる仕組みとして構築したいとお考えでしたら、ぜひフレシット株式会社にご相談ください。貴社の業務と将来像に真正面から向き合い、最適なシステム化を伴走型で支援します。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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