【東証次期トップの技術統括力に学ぶ】“技術をわかる発注者”がプロジェクトを成功させる──丸投げ文化が失敗を生む理由
主体的な判断が、システム投資の成果を左右する
2026-02-28

大規模な取引基盤を担う組織であっても、システムを外部に任せきりにせず、自ら技術を理解し、内側に知見を蓄積する姿勢が成果を左右します。高度なシステムを安定稼働させるには、優秀なシステム開発会社の存在だけでなく、「技術をわかる発注者」の存在が欠かせません。
本コラムでは、丸投げ文化がなぜプロジェクトを難航させるのかを整理しながら、発注者側に求められる視点と、伴走型フルスクラッチ開発の意義について解説します。
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目次
【記事要約】東証次期社長・横山隆介氏、取引基盤「アローヘッド」の内製化を主導
横山隆介氏は、東証の取引基盤「アローヘッド」の開発担当として、大手システム会社と対等に議論できる高度な技術力を発揮した。従来は外部任せだったシステム構築について、人材を集めて内製化体制を整備し、自前で開発・運営できる基盤を築いた。取引の高速化を支える中核インフラを主体的に設計・管理する体制を確立したことは、東証の競争力と安定運営を高める取り組みとして評価されている。
出典:日本経済新聞「東証次期社長・横山隆介氏 取引障害への対応で頭角」2026年2月26日付朝刊
ポイントをひとことで
システム投資の成否は、外部の開発力よりも、発注側がどこまで「なぜその仕様にするのか」を自分たちで説明できるかに左右されます。要件を渡して完成品を待つ姿勢では、技術的な判断軸が社内に残らず、将来の拡張や改善のたびに迷いが生じます。重要なのは、すべてを内製することではなく、意思決定の理由を自ら理解し続けることです。技術を理解しようとする姿勢そのものが、投資を資産に変える分岐点になります。
技術を理解する発注者は何が違うのか
大規模システムの現場では、単に要望を伝えるだけでは十分ではありません。どのような処理が裏側で動き、どこに負荷がかかり、どの部分が事業リスクにつながるのかを理解しているかどうかで、意思決定の質は大きく変わります。
技術を理解している発注者は、仕様の優先順位を適切に判断できます。表面的な機能追加よりも、将来の拡張性や運用負荷を重視すべき局面を見極められるからです。また、トラブルが発生した際にも、責任の所在を曖昧にせず、主体的に状況を整理できます。
一方で、技術を理解しないまま発注すると、「言われた通りにつくる」関係になりやすくなります。その結果、本来解決すべき課題とは異なる方向へプロジェクトが進んでしまうことも少なくありません。
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丸投げ文化が生む三つの問題
丸投げ文化とは、要件の整理や設計方針の検討を十分に行わないまま、システム開発会社にすべてを委ねてしまう状態を指します。一見すると効率的に見えますが、実際には大きなリスクを内包しています。
第一に、目的が曖昧になります。業務課題の本質が整理されていないまま開発が進むと、「便利な機能」は増えても、経営課題の解決にはつながらないケースが生じます。
第二に、判断の根拠が社内に残りません。なぜその設計になったのか、なぜその技術を選んだのかを理解していなければ、将来の改修や拡張の際に再びゼロから検討することになります。
第三に、責任の所在が不明確になります。不具合や遅延が発生したときに「想定と違う」という議論に終始し、本質的な改善に至らないことがあります。
これらはすべて、発注者側が主体性を持たなかったことに起因します。
発注者に求められる要件整理力とは
プロジェクトを成功に導く発注者には、要件整理力が不可欠です。ここでいう要件整理力とは、単なる機能リストの作成ではありません。
- どの業務を改善したいのか
- 何を数値で評価するのか
- 将来どの規模まで拡張する可能性があるのか
- どの部分を社内の強みにしたいのか
こうした観点を言語化し、優先順位を明確にする力です。
この整理が不十分なまま開発を始めると、途中で方向修正が頻発し、結果としてコストも期間も膨らみます。逆に、発注者側が一定の技術理解を持ち、論点を整理できていれば、システム開発会社との議論は格段に深まります。
内製化の本質は「主導権」にある
内製化という言葉は、単に自社でエンジニアを抱えることを意味するものではありません。本質は、技術的な判断を自社でコントロールできる状態にあるかどうかです。
外部の力を活用しながらも、設計思想や優先順位の決定権を自社が握ることが重要です。そのためには、発注者自身が一定の理解を持ち、議論に参加できる状態でなければなりません。
フルスクラッチ開発は、既製品に業務を合わせるのではなく、自社の戦略に合わせて設計できます。しかし、その自由度は同時に、発注者の責任も大きくします。主導権を持たないままフルスクラッチを選択すると、かえって混乱を招く可能性もあります。
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伴走型フルスクラッチ開発という選択
では、技術に精通した人材が社内にいない場合、どうすればよいのでしょうか。
一つの解決策が、伴走型のフルスクラッチ開発です。これは単に開発を請け負うのではなく、要件整理や優先順位の検討段階から共に考え、意思決定を支援する関わり方です。
重要なのは、発注者が責任を放棄することではなく、責任を果たせる体制を整えることです。外部の専門家を活用しながらも、最終判断は自社が行う。その前提で議論を進めることで、プロジェクトの質は大きく変わります。
発注者が技術を理解しようとする姿勢を持ち、システム開発会社がそれを支える関係を築けたとき、プロジェクトは単なる開発案件ではなく、競争力を高める取り組みになります。
技術を理解する経営が未来を左右する
デジタル化が進む現在、システムは単なる業務ツールではありません。企業の競争力を左右する基盤です。
その基盤を外部任せにするのか、主体的に関与するのかで、将来の選択肢は大きく変わります。技術を理解する発注者がいる組織は、トラブル時にも冷静に判断し、改善を重ねていけます。
丸投げ文化から脱却し、発注者が主導権を持つ体制を築くこと。それが、フルスクラッチ開発を成功させるための第一歩です。
まとめ
システム開発の成否は、システム開発会社の力量だけで決まるものではありません。発注者がどれだけ技術を理解し、要件を整理し、意思決定に責任を持てるかが大きく影響します。
丸投げは一時的には楽に見えますが、長期的には競争力を削ぐ選択になりかねません。主体的に関与し、必要に応じて伴走型の支援を活用しながら進めることが、プロジェクト成功への現実的な道筋です。
ここまで述べてきたように、フルスクラッチ開発を成功させるためには、発注者が主体的に関わり、技術的な論点を理解しながら意思決定を行うことが不可欠です。しかし現実には、「社内にそこまで深く議論できる人材がいない」「要件整理から伴走してほしい」というお悩みも多いのではないでしょうか。
当社フレシット株式会社は、単にシステムをつくる会社ではありません。要件整理や業務整理の段階から入り込み、発注者の立場で考え、技術的な選択肢を整理し、意思決定を支援する伴走型のフルスクラッチ開発を強みとしています。既存パッケージに業務を合わせるのではなく、事業の特性や将来像を踏まえたうえで最適な設計を共に描きます。
丸投げではなく、しかし、孤立でもない。主体性を持つ発注者と、技術的裏付けをもって支えるパートナー。その関係性を前提に、オーダーメイドのシステムをゼロから築いていきたいとお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。事業の競争力を高める一手としてのフルスクラッチ開発を、共に具体化してまいります。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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