【住商の鋼管DX拡張戦略に学ぶ】「自社専用」で終わるか「事業になる」か──外販できるシステムを作るために最初に考えるべきこと
社内ツールのままか、収益源になるか
2026-04-20

業務効率化のために導入したシステムが、いつの間にか「自社でしか使えないもの」になっている。こうしたケースは少なくありません。一方で、同じように業務課題から出発したシステムであっても、他事業や他社にも展開できる形に昇華し、新たな収益機会につなげている企業も存在します。
この違いは、機能の優劣ではなく「設計の考え方」にあります。最初の段階でどこまで汎用性や拡張性を見据えているかが、その後の展開可能性を大きく左右します。
本コラムでは、「自社専用」で終わるシステムと「事業になる」システムの違いを整理し、外販できるレベルまで引き上げるために必要な設計のポイントを解説します。
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目次
【記事要約】住友商事、鋼管取引をDXで高度化し生産計画連携とAI活用による最適供給へ
住友商事は鋼管取引の高度化に向け、顧客である石油・ガス開発企業と生産・採掘計画を常時共有する仕組みを構築する。これにより開発状況を踏まえ、鋼管の仕様や発注量を柔軟に調整できる体制へ転換する。また、在庫や市況を踏まえた管理や明細書の自動作成などのDX機能は他商材への展開も視野に入れ、サービス化や外販も検討する。さらに業界全体でもデジタル化は進み、鋼材証明書の電子化により管理や検索性を高める動きが広がっている。これらの取り組みは、在庫最適化と供給安定化を両立する新たな競争軸となりつつある。
出典:日本経済新聞「住商の鋼管取引、DXで適正在庫 AIで仕様算出など提案型追求」2026年3月18日付朝刊
ポイントをひとことで
システムが「使い切り」になるか「資産」になるかは、機能の多さではなく再利用できる前提で設計されているかにかかっています。自社最適に寄せすぎると短期的には効率が上がりますが、横展開の余地を失います。重要なのは、共通化できる部分を見極め、変更や転用が可能な余白を残しておくことです。投資判断においては、初期コストだけでなく、将来どこまで使い回せるかという視点が欠かせません。
「自社専用」で終わるシステムに共通する特徴
多くの企業がシステム開発を行う際、目の前の業務課題を解決することに集中します。それ自体は正しい判断ですが、その結果として以下のような状態に陥ることがあります。
・業務フローに過度に依存した設計になっている
・特定の部門や担当者の運用に最適化されている
・データ項目や処理ロジックが個別事情に寄りすぎている
こうしたシステムは、自社内では高い効果を発揮しますが、他事業や他社に展開しようとすると、前提条件の違いによって使い回すことができません。結果として、毎回ゼロから作り直すことになり、コストも時間もかかります。
問題は、「専用であること」そのものではなく、「専用でしか成立しない設計」になっている点です。
「事業になるシステム」は何が違うのか
一方で、外販や横展開が可能なシステムには共通点があります。それは、特定の業務に閉じず、「他でも使える前提」で設計されていることです。
例えば、在庫管理や帳票生成といった機能は、業種や商材が変わっても共通する部分が多く存在します。こうした共通領域を切り出し、再利用できる形で設計することで、別の事業や他社にも適用できる可能性が生まれます。
ここで重要なのは、「最初から外販を目的にすること」ではなく、「結果として展開できる状態を作っておくこと」です。後から汎用化しようとすると、多くの場合で大きな手戻りが発生します。
汎用化を阻む見えない壁
外販を見据えたシステム設計が難しい理由は、技術的な問題だけではありません。むしろ、業務理解の深さや設計時の視点に起因するケースが多く見られます。
・自社の業務を“当たり前”として設計してしまう
・他社の運用との差異を想定していない
・どこが共通で、どこが個別かを整理できていない
この状態では、いくら技術的に優れたシステムであっても、他への展開は困難です。逆に言えば、業務を分解し、共通部分と個別部分を見極めることができれば、再利用可能な設計に近づきます。
外販できるシステムを作るための設計ポイント
では、どのような観点で設計すれば「事業になるシステム」に近づくのでしょうか。実務上の重要なポイントを整理します。
共通機能と個別機能を分けて考える
在庫管理、承認フロー、帳票出力など、多くの企業で共通する機能は汎用的に設計します。一方で、自社特有のルールや例外処理は切り離して扱います。
パラメータで制御できるようにする
仕様をコードに埋め込むのではなく、設定で変更できるようにします。これにより、他社に適用する際のカスタマイズコストを大幅に抑えることができます。
データの持ち方を意識する
特定の業務前提に依存したデータ設計ではなく、用途が変わっても対応できる柔軟な持ち方が求められます。データの拡張性が、そのまま展開可能性に直結します。
連携を前提にする
単体で完結するのではなく、他システムとの連携を想定した設計にしておくことで、適用範囲を広げやすくなります。
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運用の幅を持たせる
一つの正解に固定するのではなく、複数の運用パターンに対応できる余地を残します。これにより、異なる業務にも適応しやすくなります。
フルスクラッチ開発が有効な理由
こうした設計を実現するためには、既存の枠に業務を合わせるのではなく、業務と将来の展開を見据えて設計する必要があります。
パッケージ製品は迅速に導入できる一方で、汎用性はあらかじめ定義された範囲に限定されます。そのため、「自社のやり方」と「他への展開」を両立させることが難しいケースも少なくありません。
フルスクラッチ開発であれば、業務にフィットさせながらも、共通化・再利用の余地を設計段階から組み込むことが可能です。結果として、「今の課題解決」と「将来の事業化」の両方に対応できるシステムを実現できます。
システムはコストか、それとも資産か
システム投資は、多くの場合コストとして捉えられます。しかし、設計次第ではそれが資産に変わります。
・他事業に展開できる
・別の用途に転用できる
・外部に提供できる
こうした可能性を持つシステムは、単なる業務効率化のツールではなく、事業の一部として機能します。逆に、使い切りのシステムは、時間とともに価値が減少していきます。
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まとめ
システム開発の初期段階では、目の前の課題解決に意識が向きがちです。しかし、その時点でどこまで将来の展開を見据えているかが、「自社専用」で終わるか「事業になる」かの分かれ目になります。
すべてを最初から完璧に設計する必要はありません。ただし、共通化できる部分を意識し、再利用できる形で設計しておくことで、後からの展開可能性は大きく広がります。
システムは作って終わりではなく、使いながら価値を広げていくものです。その前提に立った設計こそが、長期的な競争力を生み出します。
こうした「事業になるシステム」は、単に高機能なものを作れば実現できるわけではありません。どこまでを共通化し、どこに柔軟性を持たせるのか。将来の展開余地を見据えながら、業務とシステムの関係を設計していくことが重要です。
当社フレシット株式会社では、目の前の業務課題を解決するだけでなく、その先の横展開やサービス化まで視野に入れたシステムづくりをご支援しています。業務の整理から入り、共通化できる領域と個別最適が必要な領域を切り分けながら、再利用性と拡張性を両立した仕組みを構築できる点が特長です。
また、要件が固まりきっていない段階から伴走し、実際の運用を踏まえて磨き上げていくことで、「使いながら価値を広げていくシステム」を実現します。自社専用で終わらせず、将来的に他事業や外部への展開も見据えたシステムをご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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