【NTTデータの化学物質共有基盤から考える】なぜ今、“情報を送る仕組み”から“共同で参照する仕組み”へ変わっているのか
「共有しているつもり」が、確認工数を増やしている
2026-06-03

NTTデータが、化学物質情報をサプライチェーン全体で共有する新たなデータ基盤の提供を進めています。製造業向けの活用が想定されており、企業間での情報共有のあり方にも変化が見え始めています。
従来、化学物質情報は素材メーカーから部品メーカー、完成品メーカーへと、メールを介して順番に受け渡される「バケツリレー方式」が一般的でした。しかし、この運用では確認や転記、最新版管理などの負荷が大きく、規制対応が複雑化する中で限界も見え始めています。
今回のNTTデータの取り組みで注目すべきなのは、「情報を送る」のではなく、「同じ情報を共同で参照する」という考え方へ変わっている点です。この変化は化学物質管理だけの話ではありません。受発注、在庫管理、品質管理、図面管理、契約管理など、多くの業務システムにも共通するテーマです。
本コラムでは、NTTの取り組みを切り口に、“共同参照型”のシステムへ移行する企業が増えている理由と、これからの業務システム設計で重要になる視点について解説します。
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目次
【記事要約】NTT、化学物質情報を供給網全体で共有する新基盤を構築
化学物質情報の管理では、素材メーカーから完成品メーカーまでメールで情報を受け渡す「バケツリレー方式」が一般的で、確認や集約に大きな手間がかかっていた。NTTデータは、取引先が入力した情報を基に、自社製品に含まれる化学物質情報を把握できるデータ基盤を開発し、2026年10月にもサービス提供を始める。ブロックチェーン技術を活用し、関係企業のみが必要な情報を閲覧できる仕組みを採用した。従来比で化学物質情報の把握作業を約25%削減できる可能性があり、EUのREACH規制など国際的な化学物質規制への対応負担軽減が期待される。
出典:日本経済新聞「化学物質使用、供給網で共有 製造業400社向け、NTTがデータ基盤 欧州規制の対応負担減」2026年5月4日付朝刊
ポイントをひとことで
業務システムの見直しでは、「入力を減らす」ことに目が向きがちですが、実際には“同じ情報を何度も確認・転記していること”の方が大きな負荷になっているケースは少なくありません。特に企業間で情報を扱う業務では、「誰が最新情報を持っているのか」を人が判断し続ける運用そのものが限界を迎えやすくなります。これからのシステム投資では、画面や機能を増やすことよりも、「複数の関係者が同じ情報を見られる状態をどう作るか」が重要になっていくのではないでしょうか。
なぜ「メールで送る運用」が限界を迎えているのか
多くの企業では、社内外の情報共有が依然としてメール中心で行われています。
例えば製造業では、
- 部品仕様書
- 品質証明書
- 化学物質情報
- 図面
- 発注情報
- 在庫状況
などをメール添付でやり取りしているケースも少なくありません。
一見すると問題なく回っているように見えますが、実際には多くの負荷が発生しています。代表的なのが、「最新版が分からない問題」です。メール添付でファイルを送る運用では、
- どれが最新なのか
- 誰が更新したのか
- 修正内容は何か
- どこまで共有済みか
を人が判断する必要があります。
さらに、サプライチェーンのように企業数が増えるほど、確認工数は急激に増加します。今回の化学物質管理のケースでも、素材メーカーから完成品メーカーまで複数企業をまたいで情報が流れるため、途中で古い情報が残ったり、転記ミスが発生したりするリスクがあります。
また、近年は規制対応や監査対応の厳格化も進んでいます。「誰が、いつ、どの情報を登録したのか」を追跡できない運用では、業務リスクが高まりやすくなっています。つまり、メール中心の運用は単なる“非効率”ではなく、“情報管理の限界”が問題になっているのです。
NTTの新基盤が示した「共同参照」という考え方
今回のNTTデータの取り組みで重要なのは、「情報共有を効率化した」ことだけではありません。
本質は、“共同参照型”の考え方へ移行している点にあります。
従来は、
- 各社が情報を保有する
- 必要な相手へ送る
- 相手側で保存する
- 必要に応じて再送する
という流れでした。一方、共同参照型では、
- 情報を共通基盤へ登録する
- 関係企業が必要な情報を参照する
- 更新内容をリアルタイムに反映する
- 最新情報を共通化する
という運用になります。
つまり、「ファイルを送る」ことが中心ではなく、「同じデータを見る」ことが中心になるのです。この違いは非常に大きいです。例えば、メール運用では企業ごとにファイルが分散しますが、共同参照型ではデータが一元化されるため、
- 二重管理
- 転記作業
- 確認メール
- 最新版確認
- 添付漏れ
などを減らしやすくなります。
今回、NTTデータは、必要な企業だけが情報を閲覧できる仕組みを採用しています。これは単なるセキュリティ対策ではなく、「複数企業で同じ情報を扱う」前提になっているからこそ必要になる考え方です。
この変化は製造業だけの話ではない
共同参照型への移行は、化学物質管理だけで起きているわけではありません。例えば、受発注システムでも同じ変化が起きています。
以前は、
- 注文書をメール送付
- Excelで管理
- 手入力で転記
- 納期確認を電話・メールで実施
という流れが一般的でした。
しかし現在は、
- 発注側と受注側が同じ画面を見る
- ステータスをリアルタイム共有する
- 在庫や納期を自動反映する
という運用へ移行する企業が増えています。
品質管理でも同様です。検査結果をPDFで送るのではなく、共通基盤へ登録し、関係者が必要な情報を参照する方式へ変わりつつあります。さらに、
- 建設業の図面共有
- 医療機関の情報連携
- 物流業の配送状況管理
- SaaS間データ連携
なども、“共同参照”の発想がベースになっています。つまり、企業間でデータを扱う業務ほど、「送る」運用には限界が出やすいのです。
なぜ既存パッケージだけでは対応しきれないのか
ここで課題になるのが、「自社固有の運用」です。共同参照型のシステムは、一見すると汎用的に見えます。しかし実際には、
- どの情報を誰が登録するのか
- どの単位で権限を分けるのか
- どのタイミングで更新するのか
- どのシステムと連携するのか
- どこまで履歴を残すのか
など、業務ごとに細かい違いがあります。
特にサプライチェーンをまたぐ業務では、企業ごとに運用ルールが異なるため、単純なパッケージ導入だけでは対応が難しいケースもあります。また、「社内だけで完結するシステム」と違い、共同参照型では外部企業との接続も前提になります。そのため、
- API連携
- 権限管理
- データ同期
- 監査ログ
- 外部公開範囲
などを含めて設計する必要があります。ここが、単なる業務効率化ツールとの大きな違いです。
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これからの業務システムで重要になる視点
今後の業務システムでは、「自社内で完結するか」だけではなく、「外部企業とどう情報共有するか」が重要になります。特にBtoB企業では、
- 取引先との情報共有
- 複数拠点での連携
- SaaSとの接続
- 外部システムとのデータ同期
などが増えていきます。その中で重要になるのは、“送信”を前提にするのではなく、“共同利用”を前提にすることです。例えば、
- ファイルを送る
- CSVを出力する
- 手作業で転記する
という運用を続ける限り、人の確認作業は減りません。一方で、共同参照型へ移行できると、
- 情報の整合性を保ちやすい
- 更新内容を即時反映しやすい
- 業務の属人化を減らしやすい
- 監査対応を行いやすい
といったメリットが生まれます。
今回のNTTデータの取り組みは、単なる化学物質管理の効率化ではなく、「企業間でデータをどう扱うか」という変化を示している事例と言えるでしょう。
まとめ
NTTデータが進める化学物質情報共有基盤では、従来の“メールで送る”運用から、“共同で参照する”運用への変化が見られました。
この変化は化学物質管理に限った話ではありません。受発注、品質管理、図面共有、在庫管理など、多くの業務で「情報をどのように共有するか」が見直され始めています。
特に、企業間でデータを扱う業務では、メール添付やExcel中心の運用では確認工数や転記負荷が増えやすく、管理面でも限界が出やすくなります。
これからの業務システムでは、「誰に送るか」ではなく、「誰が同じ情報を参照するのか」という視点が、より重要になっていくのではないでしょうか。
さいごに
今回のNTTデータの取り組みから見えてくるのは、これからの業務システムでは「自社内だけで完結するか」ではなく、「取引先や外部システムとどう情報を共有するか」が重要になっていくという点です。
特に、メール添付やExcel管理を前提にした運用では、確認作業や転記作業、最新版管理などの負荷が増えやすく、企業間連携が増えるほど限界も見えやすくなります。
一方で、実際の現場では、
- 自社独自の業務フローがある
- 既存システムとの連携が必要
- 取引先ごとに運用ルールが異なる
- 将来的な拡張も見据えたい
といった事情も多く、既製品だけでは対応しきれないケースも少なくありません。
当社フレシット株式会社では、こうした企業ごとの業務や運用に合わせ、フルスクラッチ(オーダーメイド)で業務システムを開発しています。単に画面を作るだけではなく、
- どこで情報を持つべきか
- 誰がどの情報を参照するのか
- どの業務を自動化すべきか
- 将来的な連携や拡張へどう備えるか
といった観点から、実運用を踏まえたシステムづくりをご支援しています。
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「自社業務に合わせたシステムを作りたい」
そのような課題をお持ちでしたら、ぜひ当社フレシット株式会社へご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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