【伊藤忠・ウィーカーズのAI在庫管理から考える】なぜ優れた業務システムは“現場経験”から生まれるのか
業務知識をシステムへ反映することが競争力につながる理由
2026-06-24

中古車販売大手のウィーカーズは、AIを活用した在庫管理システムの導入を進めています。その中で注目すべきなのは、AIそのものではありません。
この仕組みは、伊藤忠から出向した社員が、英国で展開するタイヤ卸・小売事業において培った在庫管理の経験をもとに開発を主導したと報じられています。
多くの企業がDXやAI活用を進める一方で、同じツールを導入しても成果に差が生まれるのはなぜでしょうか。その答えは「現場経験をどこまでシステムに落とし込めるか」にあります。
本コラムでは、ウィーカーズの事例をもとに、業務システム開発やフルスクラッチ開発において重要な考え方について解説します。
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目次
【記事要約】伊藤忠出向者の現場知見が支えた、ウィーカーズ独自のAI在庫管理システム
ウィーカーズは、中古車事業の再建に向けてAIを活用した査定や在庫管理の高度化を進めている。なかでも注目されるのが、全国のオークション実績や販売価格データを自動収集し、AIが適正価格を算出する独自の在庫管理システムだ。この仕組みは、伊藤忠から出向し、英国でタイヤ卸・小売事業の在庫管理を経験した社員が中心となって開発された。各社で異なる車両情報の表記を統合・分析できる点が特徴で、不良在庫の早期整理や販売単価向上に活用されている。現場で培った在庫管理の知見をデジタル技術に落とし込み、収益改善につなげようとしている。
出典:日本経済新聞「中古車販売、AIで再建へ 伊藤忠、『ウィーカーズ』27年度黒字狙う 保険扱いなど回復途上」2026年5月27日付朝刊
ポイントをひとことで
システム投資で見落とされがちなのは、「どの技術を使うか」よりも「何を判断基準としてシステムに持たせるか」です。多くの企業は機能やAIの性能に目を向けますが、実際に成果の差を生むのは、現場で培われた経験や意思決定のルールをどこまで仕組みに落とし込めるかにあります。だからこそ、システム導入の前には業務の棚卸しや判断基準の整理が重要になります。競争力の源泉が業務ノウハウにある企業ほど、その知見を再現できるシステムは単なる業務効率化の道具ではなく、事業を支える資産として機能します。技術選定より先に、自社が何によって成果を生み出しているのかを明確にすることが、投資効果を高める第一歩です。
AIよりも価値を生んでいるのは業務知識
近年、多くの企業がAI活用を推進しています。しかし、AIはあくまで道具です。
同じAI技術を利用していても、成果を出す企業とそうでない企業が存在します。
その違いは何でしょうか。
ウィーカーズの事例では、全国のオークションデータや販売価格データを収集し、AIによって適正価格を算出しています。一見するとAIが価値を生み出しているように見えます。
しかし実際には、
- どのデータを集めるのか
- どのように価格を判断するのか
- どのタイミングで売却するのか
- どの在庫を残すべきなのか
といった判断基準がなければ、AIは機能しません。
つまり価値の源泉はAIではなく、長年の業務経験によって蓄積されたノウハウなのです。
今回の事例であれば、英国でのタイヤ卸・小売事業における在庫管理経験が、その判断基準の土台になっています。AIはその知見を効率的に実行する手段に過ぎません。
なぜパッケージ製品では差別化が難しいのか
企業がシステム導入を検討する際、まず候補に挙がるのがパッケージ製品やSaaSです。
もちろん標準的な業務を効率化するには有効です。しかし競争優位を生み出したい場合には限界があります。なぜなら、同じシステムを競合他社も利用できるからです。
例えば在庫管理システムを導入したとしても、
- どの在庫を重点的に管理するのか
- どの条件で補充するのか
- どのタイミングで処分するのか
といった部分は企業ごとに異なります。
業界が同じでも、商材や顧客層、販売方法が違えば最適な運用方法も変わります。結果として、標準機能だけでは自社の強みを十分に反映できないケースが少なくありません。
特に利益率や在庫回転率などが重要な業界では、この差が業績に大きく影響します。そのため独自の業務ノウハウを活用したい企業ほど、フルスクラッチ開発を選択するケースが増えています。
良いシステムは現場から生まれる
システム開発の失敗例としてよく見られるのが、現場の知見が十分に反映されていないケースです。経営層が決定し、情報システム部門が導入を進めたものの、現場では使われなくなってしまうことがあります。
その理由は単純です。
実際の業務を理解していないままシステム化してしまうからです。
現場担当者は日々の業務の中で、
- どこに無駄があるのか
- どこでミスが発生するのか
- どの判断に時間がかかるのか
- どの情報が必要なのか
を把握しています。
つまり最も重要な情報は現場にあります。
ウィーカーズの事例でも、単なるIT人材ではなく、在庫管理を実際に経験した人材が中心となって開発を進めました。
ここに大きな意味があります。
業務経験があるからこそ、「どのデータが必要か」「どの情報を結び付けるべきか」「どの指標で判断するべきか」が理解できるのです。
システムは技術者だけで作るものではありません。
業務を理解する人と開発者が協力することで初めて成果につながります。
データ統合こそが最大の難所
今回の事例で興味深いのは、各社で車両情報の表記方法が異なっていたという点です。
例えば同じ車種であっても、
- メーカー名の表記
- グレード名
- 年式の記載方法
- オプション情報
などが異なる場合があります。
人間であれば何となく理解できる情報でも、システムはそうはいきません。データを活用するためには、まず統一する必要があります。実際、多くのDXプロジェクトではAI導入よりも前にデータ整備で苦労します。
企業内でも、
- 販売管理システム
- 在庫管理システム
- 会計システム
- Excelファイル
などに情報が分散していることが珍しくありません。
その状態でAIを導入しても期待した成果は得られません。AI活用の前提となるのは、データを集約し、活用できる状態に整えることです。業務システム開発においても、この部分をどれだけ丁寧に設計するかが成果を左右します。
フルスクラッチ開発が力を発揮する場面
フルスクラッチ開発は決して万能ではありません。
標準的な業務であれば、既存サービスを利用した方が効率的な場合もあります。
一方で、
- 自社独自のノウハウがある
- 複数システムを連携したい
- 独自の判断ロジックを実装したい
- 将来的な事業拡大を見据えている
といったケースでは、フルスクラッチ開発の価値が高まります。
今回のウィーカーズのように、在庫管理の経験をシステムへ反映しようとした場合、市販製品だけで実現することは容易ではありません。業務の考え方そのものをシステムへ組み込む必要があるためです。
企業ごとの強みを再現するには、自社専用の仕組みを作ることが有効な選択肢になります。
競争優位の源泉はシステムではなく知見
多くの企業はシステム導入によって課題を解決しようと考えます。
しかし本当に重要なのは、どのシステムを導入するかではありません。自社が持つ知見やノウハウをどのように仕組み化するかです。ウィーカーズの事例が示しているのは、優れたシステムは優れた業務経験から生まれるということです。
技術は後から調達できます。
しかし現場で培われた経験や判断基準は簡単に真似できません。だからこそ競争優位はシステムそのものではなく、その背景にある知見から生まれるのです。
まとめ
AIやDXへの関心が高まる中で、技術そのものに目が向きがちです。しかし成果を生み出している企業は、現場で培った業務知識をシステムへ落とし込むことに成功しています。ウィーカーズの在庫管理システムも、英国での在庫管理経験を持つ人材の知見が土台となっていました。
業務システム開発や在庫管理システムの導入を検討する際は、「どの製品を使うか」だけではなく、「自社の強みをどのように仕組み化するか」という視点が重要です。
企業独自のノウハウを活用できる仕組みを構築できれば、それは他社が簡単には真似できない競争力につながります。
さいごに
今回の事例が示しているのは、競争力のあるシステムは最新技術だけでは生まれないということです。重要なのは、自社の業務の中で培われた経験や判断基準を、どれだけシステムに反映できるかにあります。
しかし実際には、「現場のノウハウをどのように整理すればよいかわからない」「パッケージ製品では自社業務に合わない」「複数のシステムやExcel管理が乱立している」といった課題を抱える企業も少なくありません。
当社フレシット株式会社では、単にご要望をシステム化するのではなく、お客様の業務を深く理解し、現場で蓄積された知見や運用ルールを整理したうえで、最適なシステムをご提案しています。
在庫管理システムをはじめ、基幹システム、業務管理システム、顧客管理システムなど、お客様ごとの業務に合わせたフルスクラッチ(オーダーメイド)開発を得意としております。
「自社ならではの強みをシステムに落とし込みたい」「既存のサービスでは実現できない業務を仕組み化したい」とお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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