to TOP
無料で相談する 資料を請求する

COLUMN コラム詳細

【DMG森精機のデジタル化に学ぶ】属人化した業務をどうシステム化する?「手入力をなくす」業務システム設計の考え方

「入力しやすくする」より、「入力しなくていい」をつくる

2026-09-03

企業の業務効率化を考えるとき、「紙をデジタル化する」「Excelをシステムに置き換える」「入力画面を使いやすくする」といった施策が検討されがちです。

しかし、本当に業務を効率化するのであれば、既存の手作業をそのままシステム上に移すだけでは十分とはいえません。

特に考えたいのが、「人が入力している情報を、そもそも入力しなくて済むようにできないか」という視点です。

DMG森精機の取り組みは、その考え方を理解するうえで参考になります。同社の工作機械向けアプリ「ツールマスター」では、従来、熟練技術者が工作機械へ手入力していた工具情報をQRコードとひも付け、読み取ることで加工手順へ自動的に反映できるようにしています。これにより、経験の浅い作業者でもミスを抑えて作業でき、工具の装填作業時間を最大8割短縮できるとされています。

重要なのは、単に「入力作業をデジタル化した」のではなく、手入力そのものを減らし、熟練者に依存していた業務をシステム側へ移したことです。

本コラムでは、この事例を起点として、属人化した業務をシステム化する際に重要となる考え方や、手入力をなくすための業務システム設計について解説します。

>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら

【記事要約】DMG森精機、QRコード活用で工具交換を効率化し作業時間を最大8割短縮

DMG森精機は、工作機械向けデジタルプラットフォーム「CELOS X」のアプリ「ツールマスター」を活用し、工具交換時のデータ入力を効率化している。従来は熟練技術者が工具ごとの情報を工作機械へ手入力していたが、工具の形状や寸法を事前に測定し、個別のQRコードとひも付けることで、交換時はコードを読み取るだけで必要なデータを加工手順へ自動反映できる。これにより、経験の浅い作業者でも入力ミスを抑えながら作業でき、工具の装填作業時間を最大8割短縮できるという。機械加工は製造コストに占める割合も大きく、こうした作業のデジタル化は生産性向上とコスト削減につながる。

出典:日本経済新聞「〈THE STRATEGY〉DMG森精機の研究(下)「伝統的な製造業」脱皮へ 継続課金モデルへ転換急ぐ」2026年8月18日付朝刊

ポイントをひとことで

システム投資の効果を高めるには、今ある作業をそのままデジタル化するのではなく、「人がやらなくてよい仕事をどこまで減らせるか」という視点が重要です。特に手入力や転記、定型的な確認作業は、時間がかかるだけでなく、ミスや属人化を生む原因にもなります。システム設計では、画面や機能を増やすことよりも、現場の作業そのものを減らすことを優先すべきです。人は判断や工夫が必要な仕事に集中し、それ以外をシステムに任せる。この役割分担を明確にすることが、投資対効果の高いシステムにつながります。

属人化した業務には「人がシステムを補っている」ケースが多い

属人化というと、「特定の担当者しか業務内容を知らない」「マニュアルが整備されていない」といった問題を想像するかもしれません。

しかし、システム開発の観点から見ると、もう一つ重要な問題があります。

それが、本来はシステムで処理できる作業を、人の知識や判断によって補っている状態です。

たとえば、次のような業務です。

  • 商品番号を確認して別システムへ入力する
  • Excelの情報を業務システムへ転記する
  • 顧客から届いた情報を担当者が分類して登録する
  • 商品や設備に応じて担当者が設定値を変更する
  • 過去の経験をもとに処理方法を選択する
  • 複数のシステムを見比べながら同じ情報を入力する

こうした業務では、担当者自身が複数の情報を結び付け、システムとシステム、あるいは現実の作業とシステムの間をつないでいます。

業務に慣れている人からすると当たり前の作業でも、新しく配属された人には簡単ではありません。

その結果、「この作業はAさんしかできない」「新人には任せられない」「入力ミスが怖いのでベテランが確認する」といった状態が生まれます。

属人化を解消するには、単にマニュアルを作るだけではなく、人が頭の中で行っている作業をどこまでシステムへ移せるかを考える必要があります。

DMG森精機「ツールマスター」が変えたのは入力方法だけではない

DMG森精機の「ツールマスター」の事例で注目したいのも、この点です。

金属加工では、使用する工具に応じた情報を工作機械へ正確に設定する必要があります。従来は工具ごとのデータを熟練技術者が手入力していました。

これを単純にデジタル化するだけなら、入力画面を見やすくしたり、入力項目を減らしたりする方法も考えられます。

しかし、ツールマスターでは別のアプローチが採用されています。

あらかじめ工具の形状や寸法を測定し、その情報と個別のQRコードをひも付けます。そして工具交換時には、作業者がQRコードを読み取ることで、必要な情報が加工手順へ反映される仕組みです。

つまり、

「正確に手入力できるようにする」のではなく、「正確な情報を手入力しなくてもよい状態をつくる」

という発想です。

この違いは、業務システムを設計するうえで非常に重要です。

業務効率化では「入力画面を作る」前に考えるべきことがある

業務システムの開発では、要件定義の段階から「どんな入力画面が必要か」という話になることがあります。

しかし、その前に確認したいことがあります。

その情報は、本当に人が入力する必要があるのでしょうか。

たとえば、顧客情報を別のシステムがすでに保有しているのであれば、APIなどを利用して取得できる可能性があります。

商品にバーコードやQRコードが付いているのであれば、それを読み取ることで商品情報を特定できるかもしれません。

申込情報がWebフォームから送信されているのであれば、そのデータを業務システムへ直接登録する方法も考えられます。

システム化を検討するときには、

「紙の入力をWeb入力にする」

という発想だけではなく、

「この入力作業自体をなくせないか」

まで検討することが重要です。

この視点を持つだけでも、完成するシステムは大きく変わります。

「手入力をなくす」と業務システムはどう変わるのか

手入力を減らすメリットは、単なる作業時間の短縮だけではありません。

入力ミスを減らせる

人が入力する以上、タイプミスや選択間違いを完全になくすことは困難です。

特に商品コード、金額、数量、型番など、正確性が求められる情報では、小さな入力ミスが後工程の大きな問題につながることがあります。

元データから直接取得できる仕組みにすれば、人による入力工程そのものを減らせます。

教育コストを抑えられる

業務が複雑になるほど、新しい担当者への教育には時間がかかります。

「この場合はこのコードを入力する」「この商品だけ設定を変更する」といったルールが増えるほど、経験が必要になります。

システム側で適切な情報を取得・判定できれば、担当者が覚えなければならないルールを減らせます。

業務品質を一定にしやすい

ベテランと新人で処理結果が異なる状態は、企業にとって大きなリスクです。

人によって結果が変わる業務をシステム側へ移すことで、誰が担当しても一定の手順で処理しやすくなります。

業務スピードを高められる

手入力では、「確認する」「覚える」「入力する」「間違っていないか確認する」という複数の作業が発生します。

自動取得や自動連携によってこれらを省略できれば、1件あたりでは数十秒の短縮でも、大量の処理を行う業務では大きな差になります。

属人化した業務は「熟練者の判断」を分解することから始める

ただし、属人化した業務をそのままシステムに置き換えればよいわけではありません。

まず必要なのは、熟練者が実際に何をしているのかを明らかにすることです。

たとえば、「担当者が商品を見て設定している」という業務があったとします。

詳しく確認すると、

「商品コードを確認する」
  ↓
「商品マスタを検索する」
  ↓
「商品区分を確認する」
  ↓
「区分に対応する設定値を選択する」
  ↓
「システムへ入力する」

という作業に分けられるかもしれません。

ここまで整理できれば、

「商品コードをQRコードで読み取る」
  ↓
「商品マスタから情報を取得する」
  ↓
「ルールに従って設定値を自動判定する」
  ↓
「システムへ反映する」

というシステム化を検討できます。

つまり、属人化を解消するためには、熟練者の仕事を単に「特殊なノウハウ」と捉えるのではなく、どの情報を見て、どのようなルールで判断し、何を入力しているのかまで分解することが重要です。

自動化すべき業務と人に残すべき判断を分ける

一方で、すべての業務を自動化すればよいわけではありません。

業務によっては、人の判断を残したほうが適切なケースもあります。

重要なのは、「人が判断すべきこと」と「システムで処理できること」を切り分けることです。

たとえば、商品コードから商品名を取得する作業はシステムに任せやすいでしょう。

一方、顧客との過去の関係や特殊事情を踏まえて最終判断する業務は、人が担当したほうが適切な場合があります。

この場合でも、

「情報を探す」
「複数画面を確認する」
「必要な情報を転記する」

ところまではシステム化し、

最終判断だけを人に任せる

という設計が可能です。

システム化の目的は人を業務から完全に排除することではありません。人が本来判断すべき仕事に集中できるよう、機械的に処理できる部分をシステムへ移すことが重要です。

自社独自の業務ほどフルスクラッチが選択肢になる

属人化している業務には、その企業独自のルールが含まれているケースが少なくありません。

長年の取引慣行、商品特性、顧客ごとの対応、社内承認ルール、特殊な料金計算など、一般的なパッケージでは想定されていない業務もあります。

もちろん、パッケージで十分対応できるのであれば、必ずしもフルスクラッチで開発する必要はありません。

しかし、

「自社独自の業務フローを変えたくない」

「既存システムや設備と連携したい」

「特殊な判定ルールを自動化したい」

「現場の操作をできるだけ少なくしたい」

といった要件が重要になるほど、フルスクラッチによる業務システム開発が選択肢になります。

フルスクラッチでは、既存製品の機能に業務を合わせるのではなく、実際の業務を起点として必要な機能を設計できるためです。

良い業務システムは「操作が速い」より「操作が少ない」

業務システムの使いやすさというと、画面デザインやボタン配置が注目されます。

もちろん、それらも重要です。

しかし、業務効率という観点では、さらに一歩踏み込んで考える必要があります。

入力画面を10秒で操作できるように改善するより、その入力画面自体を不要にできれば、より大きな改善につながる可能性があります。

たとえば、

「入力しやすくする」ではなく「自動取得する」

「検索しやすくする」ではなく「必要な情報を自動表示する」

「間違えにくくする」ではなく「間違える操作自体をなくす」

「確認しやすくする」ではなく「異常がある場合だけ確認する」

という発想です。

システム開発では、既存業務をそのまま画面へ置き換えるのではなく、システムを導入した後に人がどの作業をしなくて済むようになるのかまで考えることが重要です。

システム開発前に「なくせる作業」を洗い出す

新しい業務システムを開発するときには、現在の業務フローを整理したうえで、それぞれの作業について次の観点から確認すると効果的です。

「この入力は別のデータから取得できないか」

「この転記はシステム間連携でなくせないか」

「この検索はシステム側で自動化できないか」

「この判断はルール化できないか」

「この確認は異常時だけにできないか」

「この作業はそもそも必要なのか」

こうした検討を行うと、「システム化するべき業務」だけでなく、システム導入を機に廃止できる業務が見つかることがあります。

これは業務システム開発において非常に重要な視点です。

不要な業務をそのままシステム化してしまえば、システム導入後も不要な作業を続けることになります。

システムを作る前だからこそ、現在の業務を前提にせず、「この作業は本当に必要なのか」から考える必要があります。

まとめ

DMG森精機の「ツールマスター」の事例から読み取れる重要なポイントは、単なるデジタル化ではなく、熟練技術者による手入力を減らし、QRコードの読み取りによって必要な情報を加工手順へ反映できるようにしたことです。

業務システムを開発するときも、既存の手作業をそのままデジタルへ置き換えるだけでは、大きな業務改善につながらない場合があります。

「入力画面をどう作るか」を考える前に、

「そもそも、この情報を人が入力する必要はあるのか」

と考えることが重要です。

属人化した業務についても、熟練者がどの情報を確認し、何を判断し、どのような作業を行っているのかを整理すれば、自動取得、自動連携、自動判定などによってシステムへ移せる部分が見えてきます。

すべてを自動化する必要はありません。機械的な入力や転記、検索、確認をシステムに任せ、人は本当に判断が必要な仕事へ集中する。その役割分担を考えることが、業務システムによる生産性向上につながります。

「人がシステムに入力する」のではなく、「必要な情報がシステムに入る」。

手入力をなくすという視点は、単なる時間短縮にとどまらず、属人化の解消、入力ミスの削減、教育負担の軽減、業務品質の安定化まで含めた業務改善を考えるうえで重要な設計思想といえるでしょう。

さいごに

属人化した業務をシステム化する際に重要なのは、現在の作業をそのままデジタルへ置き換えることではありません。

「なぜこの入力が必要なのか」「別のシステムやデータから自動取得できないか」「人が判断する必要がある部分はどこか」と業務を一つひとつ整理し、人が行わなくてもよい作業そのものを減らしていくことが、本質的な業務改善につながります。

特に、企業独自の業務ルールや長年の運用ノウハウがある場合、既製のパッケージに業務を合わせようとすると、かえって入力や転記、確認といった作業が残ってしまうことがあります。

当社フレシット株式会社は、フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発を専門としており、決められた製品へ業務を当てはめるのではなく、お客様の実際の業務フローや現場での使われ方を理解したうえで、必要なシステムを一から設計・開発できることを強みとしています。

「担当者しか分からない業務をなくしたい」「複数システムへの手入力や転記を減らしたい」「自社独自の判断ルールをシステム化したい」といった課題も、現在の作業を丁寧に整理することで、システムによって解決できる可能性があります。

単に入力画面を作るのではなく、その入力自体をなくせないか。単に作業を効率化するのではなく、その作業自体をなくせないか。

当社フレシット株式会社では、このような視点から業務を見直し、お客様の業務に合わせたフルスクラッチのシステムをご提案します。

自社独自の業務をシステム化したいものの、「どこまで自動化できるのか分からない」「パッケージでは自社業務に合わない」とお悩みの場合は、ぜひ当社フレシット株式会社へご相談ください。

>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら

著者プロフィール

フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら

CONTACT お問い合わせ

フルスクラッチのシステム開発会社フレシットへのお問い合わせ

REQUEST 資料請求

フルスクラッチのシステム開発会社フレシットへの資料請求