物流における画像AI活用について
目視確認の負担とミスを減らすための画像AI活用と導入のポイント
2026-09-17

物流現場で毎日起きていること
物流センターや倉庫では、毎日多くの荷物が、入荷・検品・仕分け・出荷という流れで処理されています。
その中でも、ミスが起こりやすいのが「人の目による確認作業」です。
入荷時の検品では、納品書と実際の商品を見比べながら、品番や数量、破損の有無をスタッフが一つひとつ確認します。出荷前も同じように、ピッキングした商品が注文内容と合っているかを人の目で確認します。
現場によっては、1人のスタッフが1日に数百件もの荷物を確認することもあります。
こうした作業は、集中力が必要な一方で、同じ確認を繰り返す単調な作業でもあります。そのため、午後の時間帯や繁忙期の終盤など、疲れがたまってくると見落としが起こりやすくなります。
例えば、次のようなミスです。
- 似たような外箱の商品を取り違えた
- 数量を1個ではなく1ケースと誤って記録した
- 小さなへこみに気づかず、破損品をそのまま出荷してしまった
こうしたミスは、多くの物流現場で日常的に起きています。
バーコードスキャンを使えば品番の照合は自動化できます。
一方で、「箱が潰れていないか」「内容物の数が合っているか」「ラベルを貼り間違えていないか」といった確認は、いまも人の目に頼っている現場が少なくありません。
作業量が増えれば、確認に必要な時間も増えます。人員を増やせばコストがかかります。しかし、確認作業を減らせばミスが増える可能性があります。
このような状況が、多くの物流現場で解決されないまま続いています。
ミス1件が引き起こすコストと影響
検品ミスや誤出荷が1件発生しただけであれば、対応にかかる時間や手間はそれほど大きくないように見えるかもしれません。
しかし実際には、1件のミスから複数の部署や作業に影響が広がっていきます。
問い合わせ対応
まず発生するのが、誤出荷に気づいた取引先や顧客からの問い合わせです。
担当者は問い合わせへの対応に時間を取られ、その間、本来行うべき業務を進められなくなります。
再出荷・返品対応
次に、正しい商品を改めて手配し、再出荷する作業が必要になります。
誤って届けた商品の回収が必要な場合には、往復分の配送コストも発生します。
破損品であれば、代替品の手配に加えて、廃棄処理のコストがかかることもあります。
取引先の業務への影響
影響は金銭的なコストだけではありません。
取引先が製造業であれば、部品の誤納品によって生産スケジュールに影響が出ることがあります。
小売業であれば、欠品や誤納品によって、本来売れるはずだった商品の販売機会を失うことがあります。
こうしたミスが重なると、「あの会社は検品が甘い」という評価につながり、次の発注が減ってしまう可能性もあります。
社内で発生する調査・報告業務
社内でも、ミスが発生するたびに原因を調べ、再発防止策を考える必要があります。
具体的には、次のような対応が発生します。
- 担当者の特定
- 作業記録の確認
- 報告書の作成
これらの作業には、現場スタッフだけでなく管理者の時間も必要です。
ミスが続けば、現場で働くスタッフのモチベーションにも影響します。
1件あたりの対応コストを正確に把握している物流現場は、それほど多くありません。
しかし、問い合わせ対応、再出荷、返品処理、社内調査などを合計すると、1件あたり数千円から数万円規模になることも珍しくありません。
月に数十件のミスが発生している現場では、その積み重ねは決して小さくありません。
カメラとAIで何が変わるのか
カメラを使った画像AIをわかりやすく表すと、「これまで人が目で見て確認していた作業を、カメラとコンピューターに任せる仕組み」です。
バーコードスキャンによって品番の照合が自動化されたように、画像AIを使うことで、「見て判断する作業」も自動化できるようになります。
具体的に、どのような場面で活用できるのかを見ていきます。
入荷・出荷時の数量確認
荷物をカメラで撮影し、箱の数や商品の個数を自動で数えます。
例えば、「10個あるはずなのに9個しかない」といった数量の違いを、スタッフが一つひとつ数えなくても検出できます。
繁忙期やスタッフの疲れがたまっている時間帯でも、カメラによる確認であれば、人の集中力のように精度が落ちることはありません。
外箱の破損検出
人の目では見落としやすい小さなへこみや破れなども、カメラで確認できます。
これによって、「破損に気づかないまま商品を出荷してしまった」といったクレームを防ぎやすくなります。
ラベルの確認
ラベルの貼り間違いや傾き、印字のかすれなどもカメラで検出できます。
バーコードが読み取れない状態のまま商品が出荷されてしまうことも防ぎやすくなります。
仕分けの補助
カメラで商品の形や色などを確認し、その商品をどこへ仕分けるべきかをスタッフに案内します。
品番をまだ覚えていない新人スタッフでも、案内に従うことでミスを減らしながら作業を進められます。
トラックへの荷物の積み込み確認
トラックへ荷物を積み込む際に、カメラで積載状況を撮影し、積み忘れや積み過ぎがないかを確認します。
出発前に問題を見つけられるため、配送先に到着してから「荷物が足りない」と気づくトラブルを防ぎやすくなります。
また、ドライバーと倉庫スタッフの間で起こりやすい「積んだ」「積んでいない」といった認識の違いについても、映像を記録として残すことで確認できるようになります。
棚卸しの補助
棚をカメラで撮影し、在庫の数量や配置を記録します。
これまで複数のスタッフが手分けして数えていた棚卸し作業の時間を短縮できるほか、人が数えることで起きる在庫数の間違いも減らせます。
画像AIによって「確認する作業」を切り離せる
これらに共通しているのは、これまでスタッフが行っていた「確認する作業」の一部を、カメラと画像AIに任せられるという点です。
スタッフは毎回自分の目で確認するのではなく、確認結果を受け取って次の作業へ進めるようになります。
その結果、同じ人数でも、より多くの荷物を処理できるようになる可能性があります。
また、確認作業を人の目だけに頼らなくなるため、スタッフの経験年数やその日の体調によって、確認の精度に差が出にくくなります。
ただし、画像AIですべての確認作業を置き換えられるわけではありません。
取り扱う商品の種類が非常に多い場合や、照明の明るさ、背景などが一定でない環境では、カメラが正しく判断できないことがあります。
そのため、「何を自動化するのか」「どの工程で使うのか」を事前に絞り込むことが、導入を成功させる上で重要です。
導入してうまくいかなかった事例
画像AIの導入を検討すると、「他社で成功しているのであれば、自社でも同じように使えるのではないか」と考えやすくなります。
しかし実際には、導入してみたものの期待したほど機能しなかったり、現場で使われなくなったりするケースもあります。
ここでは、よくある失敗例を紹介します。
照明が変わると使えなくなった
画像AIは、カメラで撮影した画像や映像をもとに判断します。
そのため、照明の明るさや光が当たる方向が変わると、同じ商品でも見え方が変わり、正しく判断できなくなることがあります。
例えば、導入した直後は問題なく動いていたものの、季節が変わって倉庫内への日差しの入り方が変わり、誤検出が増えてしまったというケースがあります。
こうした問題を防ぐためには、導入前に照明環境をできるだけ一定にする必要があります。
ところが、この点に導入後に気づき、追加の工事や改修が必要になるケースも少なくありません。
商品が増えるたびに使えなくなった
新しい商品が増えた場合、画像AI側にも「これが新しい商品である」と認識させるための対応が必要になります。
ところが、この作業を担当できる人が社内にいないと、新商品だけ従来の手作業に戻すことになります。
その結果、少しずつ画像AIを使わない商品が増え、最終的に活用できる範囲が狭くなってしまうことがあります。
導入後に誰が対応するのかを事前に決めておかないと、かえって現場の負担が増えることがあります。
現場スタッフが使わなくなった
システムを導入しても、実際に使う現場スタッフが操作に慣れなければ、定着しません。
例えば、
- 「カメラのアラートが多すぎて邪魔」
- 「結局、自分で確認した方が早い」
と感じられてしまい、次第に使われなくなることがあります。
スタッフへの説明や操作方法のトレーニングが不十分なまま運用を開始すると、このような問題が起こりやすくなります。
また、導入後に現場の意見を確認せず、そのままにしてしまうと、高価なシステムを導入したにもかかわらず、実際にはほとんど使われていないという状況にもなりかねません。
対象が多すぎて絞り込めなかった
「倉庫全体の作業をAIで管理したい」と考え、最初から広い範囲を対象にして導入を進めるケースがあります。
しかし、扱う商品の種類や対象となる作業が多すぎると、対応しきれず、途中でプロジェクトが止まってしまうことがあります。
画像AIは、最初から何でも対応させるよりも、対象を絞り、特定の工程に集中して使う方が安定しやすくなります。
最初から範囲を広げすぎると、どこから対応すればよいのかわからなくなってしまいます。
複数拠点への展開で管理が追いつかなかった
1つの拠点で導入がうまくいくと、次に他の拠点にも広げたいと考えることがあります。
しかし、拠点ごとに扱っている商品や照明環境、設備などは異なります。
そのため、1拠点目で使っていた設定を、そのまま別の拠点で使えるとは限りません。
展開先ごとに設定を見直したり、実際の現場を確認したりする作業が必要になります。
ところが、こうした対応に必要な工数を事前に見込んでおらず、展開が遅れたり、一部の拠点では導入を断念したりするケースがあります。
将来的に複数拠点へ展開する予定がある場合には、最初の段階で拠点ごとの違いを確認し、それを前提に導入計画を立てることが必要です。
失敗事例に共通するポイント
これらの失敗に共通しているのは、「画像AIを導入すること」そのものが目的になってしまい、「どの課題を解決したいのか」「どのような条件で使うのか」がはっきりしないまま進めてしまったことです。
導入前に自社で確認すべきこと
画像AIの導入を考え始めたとき、すぐにシステム開発会社へ相談するのではなく、まず自社の現場で確認しておいた方がよいことがあります。
この確認をしないまま導入を進めると、後になって「想定していたものと違った」という状況になりやすくなります。
どの工程の、どの確認作業を対象にするか
「物流全体をAIで効率化したい」といった大きな考え方だけではなく、「入荷時の数量確認」「出荷前の外箱の破損チェック」といったように、対象となる作業を具体的に決めておくことが重要です。
対象が明確であるほど、導入後も安定して使いやすくなります。
まずは1つの工程から始め、実際に効果が出るかを確認してから、少しずつ対象を広げていく進め方が現実的です。
カメラを設置できる場所と環境があるか
カメラをどこに設置するのか、電源を確保できるのか、照明は安定しているのかを事前に確認しておく必要があります。
特に重要なのが照明です。
自然光が入る場所では、時間帯によって明るさが変わります。
そのため、できるだけ一定の明るさを保てる環境を用意できるかを確認しておく必要があります。
カメラをどこに設置するのか決まっていない状態で導入を進めると、後から工事や設備の変更が必要になることがあります。
対象となる商品・荷物の種類はどのくらいか
取り扱っている商品の種類が多いほど、画像AIに商品を認識させるための対応も増えます。
商品数が数十種類であれば比較的対応しやすい一方、数百種類、数千種類になると導入の難易度も上がります。
また、季節や取引先によって取り扱う商品が頻繁に変わる現場では、新しい商品が追加されるたびに対応できる体制があるかも確認しておく必要があります。
導入後の運用を担当できる人員がいるか
画像AIは、導入すればその後は何もしなくてよいシステムではありません。
例えば、次のような日常的な対応が必要になります。
- 新商品の追加対応
- カメラの清掃や点検
- 誤検出が増えたときの調整
こうした作業を社内の誰が担当するのか、あるいはシステム開発会社へ依頼するのかを、導入前に決めておくことが重要です。
運用体制を決めないまま導入すると、実際に使い始めてから現場が対応に困ることになります。
既存のシステムと連携できるか
倉庫管理システム(WMS)や基幹システムとデータを連携させたい場合には、現在使っているシステムの仕様を確認する必要があります。
もし連携できなければ、画像AIで確認した結果を別のシステムへ手入力する必要が残り、二重管理になってしまう可能性があります。
システム開発会社へ相談する前に、自社のシステム担当者へ現在のシステムの状況を確認しておくと、その後の話を進めやすくなります。
まとめ
物流現場では、バーコードスキャンが普及した現在でも、人の目による確認作業が多く残っています。
数量の数え間違い、破損の見落とし、ラベルの貼り間違いなどは、1件ずつ見ると小さなミスに思えるかもしれません。
しかし、問い合わせ対応、再出荷、返品処理、社内での原因調査などまで含めて考えると、現場にとって大きな負担になります。
画像AIを活用すると、これまで人が「見て判断していた作業」の一部をカメラに任せることができます。
その結果、スタッフの疲れや経験年数によって確認の精度に差が出にくい体制をつくることができます。
ただし、画像AIを導入しただけで、自動的にすべての課題が解決するわけではありません。
- 照明環境を整える
- 対象となる工程を絞る
- 導入後の運用体制を決める
こうした準備ができていない状態で導入すると、実際の現場で使われなくなってしまう可能性があります。
画像AIの導入を検討するときは、まず「自社のどの工程で、どのようなミスが繰り返し起きているのか」を具体的に整理することから始めることが重要です。
課題が具体的になっていれば、システム開発会社との打ち合わせも進めやすくなり、導入した後にどの程度の効果が出たのかも確認しやすくなります。
画像AIは、あくまで物流現場の課題を解決するための手段のひとつです。
導入したからといって、物流現場のすべての課題がなくなるわけではありません。
人が判断しなければならない場面は残りますし、システムを維持するための費用も必要です。
それでも、毎日繰り返している確認作業の一部をカメラに任せることで、スタッフがより重要な業務に時間を使えるようになります。
技術的な部分はシステム開発会社に任せることができます。
その前に、自社の物流現場でどのようなミスや負担が発生しているのかを整理しておくことが、画像AIの導入を成功させる第一歩です。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら