レガシーシステムを移行する際のおすすめ手法やポイントを徹底解説
「現状維持のための移行」から「事業を前に進める刷新」へ
2026-09-25

ビジネス環境が凄まじいスピードで変化を続けている昨今、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、生き残るための努力を続けていますが、その際にネックとなりかねないのがレガシーシステムの存在です。しかしながら、その事実を軽視し、経営者や責任者がレガシーシステムの実態を十分に把握していないケースも珍しくありません。
レガシーシステムを使い続けることはさまざまなリスクを生み、事業継続に関わる大きな問題に発展する恐れもあります。
本コラムでは、そもそもレガシーシステムとは何かといった基本的な知識を始め、レガシーシステムの問題点や移行せず放置するリスク、移行する際の手法やポイントについて詳しく解説しています。レガシーシステムの移行でよくある失敗とその対策、移行にかかる費用や期間などについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、構築・導入から長い時間が経過することでアーキテクチャが古くなり、現在のビジネス環境や業務要件に適応しづらくなっているシステムのことです。プログラミング言語などに古い技術が使われているため、メンテナンスが困難になり、DX推進の大きな妨げとなっているケースも少なくありません。
経済産業省も多くの日本企業で未だレガシーシステムが使われていることに危機感を抱いており、それらが刷新されないままDXの推進が遅れると、2025年以降の年間損失が最大12兆円に達するとされる「2025年の崖」という警告を発表しました。
レガシーシステムの問題点
レガシーシステムには多くの問題点がありますが、主なものは次の通りです。
- アーキテクチャや仕様のブラックボックス化
- 機能や性能の限界
- 脆弱なセキュリティ
以下、順に解説します。
アーキテクチャや仕様のブラックボックス化
レガシーシステムの抱える問題点の1つ目は、アーキテクチャや仕様のブラックボックス化です。遠い過去に構築されたシステムのため、有効な資料がほとんど残されておらず、誰もシステムの実態を把握していない状況も珍しくありません。
構築時の担当者が在籍していたり、高度なスキルを持ったエンジニアがシステムを分析したりすることでメンテナンスを実現しているケースもありますが、限られたメンバーしか対応できない属人化した状況では、安定した運用の継続は難しく、コストの高騰にもつながります。
機能や性能の限界
レガシーシステムの抱える問題点の2つ目は、機能や性能が限界に達していることです。採用されている技術やアーキテクチャが古いため、多くのレガシーシステムにおいて、現在の複雑化したビジネス要件に耐えられなくなっています。
昨今、企業が活用するシステムでは、凄まじいスピードで変化を続けるビジネス環境に対応し、リアルタイムで結果を出せることが極めて重要です。レガシーシステムが持つ機能や性能でそれを実現することは、非常に難しいといえるでしょう。
脆弱なセキュリティ
レガシーシステムの抱える問題点の3つ目は、セキュリティが脆弱であることです。レガシーシステムでは、上述したブラックボックス化や、技術・アーキテクチャの陳腐化により、現代のセキュリティレベルを満たす対策を講じることが困難になっています。
不正アクセスやサイバー攻撃などの手法が多様化している昨今は、システムに堅牢なセキュリティを施すことが大前提です。レガシーシステムの脆弱なセキュリティでは、いずれ深刻な問題を引き起こす恐れが恐れがあります 。
レガシーシステムを移行せず放置するリスク
レガシーシステムの移行に踏み切らず、放置したまま使い続けることには、主に次のようなリスクがあります。
- 事業継続が困難になる
- 業務が非効率化し停滞する
- 重大なセキュリティ事故が発生する
それぞれ、以下で解説します。
事業継続が困難になる
レガシーシステムを使い続けている企業では、前述したブラックボックス化などの問題により、限られた人材しかメンテナンスできないようなケースが多くあります。そのような状況で、システム停止などの障害が発生した場合、担当者不在で迅速な対応ができないことも考えられるでしょう。
障害復旧までに長い時間がかかれば、ビジネスに重大な影響を及ぼします。最悪の場合は事業が継続不可となる事態にもなりかねません。
業務が非効率化し停滞する
古い技術やアーキテクチャを採用しているレガシーシステムが、現在の複雑化したビジネス要件やスピーディな目的遂行に応えられなくなると、業務効率は著しく低下します。社会環境の変化に追従することが求められる現在のビジネス現場では、これが致命傷となり、市場での競争力低下につながる可能性があります 。
また、老朽化による不具合の頻発や、メンテナンスできる人材の不足などにより、運用コストは増大します。ついては新しいビジネスへの投資ができなくなり、組織全体が停滞した状況に陥ってしまいます。
重大なセキュリティ事故が発生する
セキュリティの脆弱なレガシーシステムは、不正アクセスやサイバー攻撃などの被害を受けるリスクが高いといえます。対策を施そうにも、採用されている技術やアーキテクチャの問題で、現代のセキュリティ基準は満たせないことが多いでしょう。
その結果、重大なセキュリティ事故が発生すると、事業に影響を及ぼすばかりでなく、企業としての社会的信用も失墜します。
レガシーシステムの移行が難しい理由
これまで見てきた通り、レガシーシステムにはさまざまな問題点やリスクがあり、早急に移行するのが望ましいといえます。しかしながら、移行に踏み切らず、レガシーシステムを使い続ける企業が少なくないという事実には、主に次のような理由があると考えられます。
- 必要な人材が不足している
- 経営層の理解が得られない
- 依存による心理的な抵抗
以下、それぞれについて解説します。
必要な人材が不足している
前述した通り、レガシーシステムはブラックボックス化され、メンテナンスなどの対応は限られた人材しか実現できないケースが多くあります。さらに移行となれば、全体を統括するプロデューサーを始め、デザイナーやアーキテクト、システムエンジニア、プログラマなど、さまざまな職種の人材が必要です。
レガシーシステムに対応できるこういった人材を確保するのが元来困難であることに加え、昨今の労働力不足に伴う採用競争激化がそれに拍車をかけています。これらの事実が、レガシーシステムの移行を難しくしているのです。
経営層の理解が得られない
経営層がレガシーシステムの移行に十分な意義を見出せなければ、実現に踏み切ることは難しいでしょう。特に、ITリテラシーが不足しており、レガシーシステムの抱えるリスクを単なる技術的な問題として片付けてしまうような経営層の場合、説得するには多大な労力を必要とします。
さらに、レガシーシステムの移行には、必要な人材の確保、新たな技術への投資など、相応のコストがかかるのが一般的です。予算の確保を含めて経営層の理解を得るのは、レガシーシステムの移行において大きな障壁といえます。
依存による心理的な抵抗
レガシーシステムは、導入から長い年月が経過し、多くのメンバーが試行錯誤しながら使い続けてきたものです。そのため、業務のフローや各プロセスと密接に結び付き、日常的に深く依存しているケースが少なくありません。結果として「動いているからこのままでいい」といった安易な感情を生み、移行に対する心理的な抵抗が広がりやすくなります。
多くのメンバーがこのような心情に陥っていると、レガシーシステムの持つ本質的な問題から目を逸らしたまま、移行に踏み切れない状況が続きかねないでしょう。
レガシーシステムを移行する際のおすすめ手法
レガシーシステムを移行する際のおすすめ手法を、規模や状況に応じて次の3種類にまとめました。
- リホスト(プラットフォームの移設)
- リライト(プログラムの刷新)
- リビルド(全体の再構築)
以下、それぞれの概要や違いを表にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
| リホスト (プラットフォームの移設) | リライト (プログラムの刷新) | リビルド (全体の再構築) | |
| 概要 | システムのプログラムやアーキテクチャには手を加えず、新たなプラットフォームへそのまま移行する | リホストとリビルドの中間に位置する概念で、プラットフォームの移行に加え、既存システムの設計・仕様を基に、プログラムを新たな言語で書き換える | プラットフォームを始め、設計・仕様、プログラミング言語など、システム全体を刷新して新たに構築し直す |
| コストの目安※ | 低(数百万円程度) | 中(数百万~数千万円程度) | 高(数千万~数億円程度) |
| メリット | ・移行期間が短い ・コストが抑えられる ・ユーザーが戸惑うことがない | ・拡張性が高く新技術への対応も可能 ・メンテナンス性が向上する | ・BPR(業務改革)やDXに対応できる ・複雑な業務要件も実現可能 ・拡張性が最も高く新技術も積極的に採用できる |
| デメリット | ・最小限の移行に留まる ・レガシーシステムの問題が残る恐れがある ・機能拡張などの柔軟性は低い | ・相応の工数とコストが必要 ・プログラム書き換えにより品質が低下するリスクがある | ・高額な予算と長い時間がかかる ・多くの人材が必要となり確保が難しい ・失敗のリスクが高く慎重に進める必要がある |
| おすすめのケース | ・安定稼働を最優先しながら移行したい場合 ・現場の混乱を起こしたくない場合 | ・業務要件を変えないまま新環境に移行したい場合 ・属人化からの脱却を図りたい場合 | ・既存システムの老朽化が激しく、全面的に見直す必要がある場合 ・基幹システムの全面刷新によりビジネスを革新させたい場合 |
※コストは、システムの規模や内容によって大きく異なることがあります。
レガシーシステムの移行ステップ
レガシーシステムの移行は、次のようなステップを踏んで実施されます。
- 現状の課題と目的の明確化
- 手法の選択と移行計画の立案
- 移行作業の実施
- 運用体制の確立
以下、順に解説します。
1.現状の課題と目的の明確化
レガシーシステムの移行における最初のステップは、現状の課題を整理し、移行の目的を明確化することです。
ハードウェアのスペック、ユーザー数やアクセス数、他システムとの依存関係など、多角的な観点から現状を分析し、課題の棚卸を行います。さらにはそれらの課題を解決するための要件を洗い出しながら、新システムに移行する具体的な目的を明らかにすることが大切です。
2.手法の選択と移行計画の立案
次のステップは、レガシーシステムを移行するための手法の選択と、具体的な移行計画の立案です。
前ステップで明確となった移行の目的に加え、現行システムの規模や内容、確保できる予算などを総合的に勘案し、プラットフォームの移行に留めるか(リホスト)、全てを刷新して構築し直すか(リビルド)といった手法を選択します。また、選択した手法を基に詳細な移行計画を立てながら、必要となるプロジェクトメンバーの選定や各部署との調整も行わなくてはなりません。
3.移行作業の実施
移行計画が策定されたら、いよいよ実際にレガシーシステムの移行を実施するステップです。
移行手法としてリライトやリビルドを選択した場合は、一般的なシステム構築と同様、開発フェーズに長い時間を費やすこともあります。どの手法を選択した場合でも重要となるのは、実際の本番移行前にリハーサルを実施することと、移行後に入念な検証・テストを行うことです。また、運用コストやセキュリティの観点から、移行完了後に旧システム(レガシーシステム)を迅速に廃止することも大切なポイントといえます。
4.運用体制の確立
移行の完了と同時に、メンテナンスやサポートを実施する運用体制を確立しておく必要があります。
特に移行直後は、現場ユーザーからの問い合わせや予期せぬトラブルが数多く発生するため、スムーズに対応できるようサポート窓口を整備しておくことが重要です。なお、運用体制については、移行の計画段階で概ねのイメージを描いておき、完成した新システムに鑑みながら詳細を確立するのが理想といえます。
レガシーシステムの移行でよくある失敗と対策
レガシーシステムの移行でよくある失敗には、主に次のようなものがあります。
- 全社的な協力が得られない
- 新システムが業務にフィットしない
- フルスケールでの移行により問題が噴出する
それぞれについて、有効な対策案を交えながら解説します。
全社的な協力が得られない
特定部門のみが活用するような小さなシステムであればいざ知らず、基幹システムなど全社に影響する大規模なレガシーシステムを移行するケースでは、部門をまたいだ多くのメンバーによる協力が不可欠です。
しかしながら、レガシーシステムの移行をIT部門のみの問題と考えたり、移行担当者に丸投げして「知らぬ存ぜぬ」の態度を貫いたりする姿勢が横行し、全社的な協力が得られないという企業は珍しくありません。移行の成功に向け、まずは経営層がその重要性を理解し、トップダウンで全社一体の風土を作りながらプロジェクトを進める必要があります。
新システムが業務にフィットしない
長年使用されてきたレガシーシステムには、関連資料からは読み取れない特殊な運用方法や、担当者にしか分からない独自の判断基準といった、いわゆる「暗黙知」が少なからず存在するといわれます。
これらを深く追求することなく、通り一遍の現状分析や要件定義を安易に進めてしまうと、移行後の新システムが業務にフィットせず、効率が上がらないリスクがあるため注意が必要です。レガシーシステムにおける現状分析や要件定義は、暗黙知の存在を前提としながら慎重に進めるのがポイントといえます。
フルスケールでの移行により問題が噴出する
すべての業務システムをフルスケールで移行する、いわゆる「ビッグバン方式」の移行は極めてハードルが高く、失敗のリスクが高いといわれています。ブラックボックス化など、元来さまざまな問題点を抱えているレガシーシステムの移行であれば、なおさらその傾向は強いでしょう。
そのため、すべてを一気に移行しようとせず、まずは影響範囲の狭い部分を対象にスモールスタートし、問題を一つ一つ解決しながら徐々に対象を広げていく段階的な移行をおすすめします。
レガシーシステムの移行にかかる費用や期間
レガシーシステムの移行にかかる費用や期間は、対象となるシステムの規模や内容によってさまざまであり、一概に決めることはできません。ただし、1つの目安として、前述した3つの手法で小規模なシステム(数十名程度のユーザー)を移行した場合の、おおよその費用や期間についてまとめましたので参考にしてください。
リホスト
費用:数百万~1,000万円程度
期間:数か月~半年程度
リライト
費用:数百万~数千万円程度
期間:半年~1年程度
リビルド
費用:数千万~1億円程度
期間:1年~数年程度
※あくまで1つの目安とお考え下さい。
※レガシーシステムの規模や内容、委託するシステム開発会社など、さまざまなファクターによって費用や期間は大幅に変わることがあります。
レガシーシステムの移行を依頼するパートナー会社の見極め方
レガシーシステムの移行をパートナー会社に依頼する場合、まずはその経験がどの程度あるかをチェックしましょう。自社と同業であるクライアントからの依頼はもちろん、規模や内容が類似しているレガシーシステムの移行実績が豊富にあれば安心です。
また、レガシーシステムの移行では、当該システムで採用されている古いプログラミング言語の理解度や、現状に対する課題分析力、リハーサルを含めた移行計画の提案力などが高いレベルで求められます。Webサイトなどの情報だけではそれらが不明瞭な場合、臆することなく質問をぶつけて納得できるまで確認しましょう。
さまざまな調査を経て、実際にパートナー会社を決定する段階では、有力と思われる候補を可能な限り多くピックアップし、見積金額を含めて比較検討する必要があります。その際、「技術力には自信があります」「システムの移行はお任せください」「価格ならどこにも負けません」といった具体性に欠けるアピールには踊らされないことも大切です。
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まとめ
今回は、レガシーシステムを移行する際のおすすめ手法やポイントを中心に、レガシーシステムを移行せず放置することのリスク、移行でよくある失敗とその対策、移行にかかる費用や期間などについて解説しました。
レガシーシステムは、経済産業省が危機感を抱くほどに問題点が多く、DXの推進を妨げる大きな要因となります。日本企業がグローバル市場で競争力を維持するには、すべてのレガシーシステムにおける一刻も早い移行が望まれますが、計画性のない安易な移行は失敗を招き、損失を被ることにもなりかねません。
レガシーシステムの移行を成功に導くには、課題や目的を明確にしたうえで最適な手法を選択し、無理のない移行計画を立てる必要があります。人材不足などの理由により、自社ですべてを賄うことが難しい場合は、経験豊富なパートナー会社に依頼するのも良案です。
さいごに
レガシーシステムの移行は、古くなったシステムを新しい環境へ移し替えるだけではありません。長年の運用で積み重なった業務上の課題や属人化、使いにくさを見直し、これからの事業に必要なシステムへ作り変える機会でもあります。
特に、既存システムが自社独自の業務に深く組み込まれている場合、パッケージ製品に業務を合わせようとすると、必要な機能が不足したり、現場に合わない運用が生まれたりすることがあります。そのようなケースでは、自社の業務や将来の事業展開に合わせて設計できるフルスクラッチ(オーダーメイド)開発が有効な選択肢となります。
当社フレシット株式会社は、フルスクラッチによるシステム開発を専門としています。既存システムの機能をそのまま再現するのではなく、「なぜこの業務が必要なのか」「どこを残し、どこを変えるべきなのか」を整理したうえで、お客さまの業務に合ったシステムをご提案します。
また、将来的な機能追加や事業の変化も見据え、移行後も長く活用できるシステムを目指して設計・開発を行います。
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監修者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田 順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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