産業機械に共通ID、メーカーを越えたデータ管理へ|複数システムのデータを一元管理する方法
複数システムをつなぐ、データ一元管理の考え方
2026-10-17

企業では、販売管理、顧客管理、在庫管理、生産管理、会計など、目的ごとに複数のシステムを利用することが一般的です。
しかし、システムが増えるほど問題になりやすいのが「データの分断」です。
同じ顧客なのにシステムごとに顧客コードが異なる、同じ商品なのに商品名の表記が違う、工場ごとに設備の管理方法が異なる。このような状態では、各システムにデータが蓄積されていても、それらを横断して利用することが難しくなります。
こうした課題を考えるうえで参考になるのが、産業機械にメーカー共通のIDを付与する取り組みです。
政府とDMG森精機、コマツなどが連携し、メーカーが異なる産業用ロボや工作機械などに共通IDを付与して、稼働状況や加工条件などのデータを収集・管理する取り組みが進められています。産業技術総合研究所が中心となり、データ形式や管理方法の統一も進める計画です。
ポイントは、単に大量のデータを集めることではありません。
「このデータは、どの機械のデータなのか」を共通IDによって識別できるようにすることです。
この考え方は、製造業だけのものではありません。複数の業務システムを利用している企業が、社内データを一元管理する際にも重要になります。
本コラムでは、複数システムに分散したデータを一元管理するために、なぜ共通IDが重要なのか、どのような考え方でシステムを設計すればよいのかを解説します。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
目次
- 1 【記事要約】産業機械に共通ID、メーカーを越えたデータ一元管理でフィジカルAI開発へ
- 2 メーカーを越えて産業機械のデータを管理する取り組み
- 3 なぜ複数システムを導入するとデータがバラバラになるのか
- 4 データを集めるだけでは「一元管理」にならない
- 5 共通IDを決めると複数システムのデータをつなぎやすくなる
- 6 共通IDは顧客だけではない
- 7 共通IDだけ決めてもデータ統合は完成しない
- 8 「どのシステムを正とするか」を決める
- 9 データ連携には複数の方法がある
- 10 フルスクラッチが適しているケース
- 11 AI活用でも共通IDとデータ一元管理が重要になる
- 12 データ一元管理は「集める」から「つなぐ」へ
- 13 まとめ
- 14 さいごに
【記事要約】産業機械に共通ID、メーカーを越えたデータ一元管理でフィジカルAI開発へ
政府とDMG森精機、コマツなどは、フィジカルAIの開発に活用する製造データの収集に向け、産業機械へメーカー共通のIDを付与する取り組みを進める。大きな特徴は、メーカーが異なる産業用ロボや工作機械でも、共通IDを基準に稼働状況や加工条件などのデータをまとめて管理できる点にある。産業技術総合研究所が中心となり、データ形式や管理方法の統一も進める。これにより、メーカーごとに分散していた製造データを用途や装置の種類に応じて整理し、横断的かつ効率的に分析できる環境を整える。まず100社超の参加を募り、約1600台の産業機械へのID付与を予定しており、収集したデータは匿名化した上で国産AIの開発などに活用する方針だ。
出典:日本経済新聞「産業機械に『マイナンバー』 フィジカルAIのデータ、官民で収集 コマツやDMG森参画」2026年9月21日付朝刊
ポイントをひとことで
システムを増やすたびに個別最適でデータを管理していると、後から連携や分析をしようとしたときに大きなコストがかかります。重要なのは、目の前の機能だけでなく、「将来、このデータを別のシステムでも使えるか」という視点を持って設計することです。共通IDはそのための有効な手段ですが、本質はIDをそろえることではありません。顧客や商品、設備などを会社全体でどう管理し、どのデータを正しい情報として扱うのかを決めることです。将来のAI活用まで考えるなら、システム投資は機能だけでなく、データを長く活用できるかという視点で判断することが重要です。
メーカーを越えて産業機械のデータを管理する取り組み
政府とDMG森精機、コマツなどが連携し、産業機械に共通IDを付与して、フィジカルAIの開発に活用する製造データを収集・管理する取り組みが進められています。
計画では、工場で稼働する産業用ロボや工作機械などに共通IDを付与し、それぞれの機械から稼働状況や加工条件などのデータを収集します。
まず100社超に参加を募り、約1600台の産業機械へのID付与を予定しています。
これまでにも製造現場では、機械からさまざまなデータを収集する取り組みが行われてきました。
今回のポイントは、特定メーカーの製品だけを対象とするのではなく、メーカーを越えて産業機械を識別できるようにすることです。
たとえば、A社とB社がそれぞれ産業用ロボットを製造していたとします。
メーカーごとに機械の管理方法やデータ形式が異なれば、複数メーカーのデータをまとめて分析するためには、それぞれのデータが何を意味しているのかを確認し、対応関係を整理しなければなりません。
そこで共通IDを利用し、「どの機械から取得したデータなのか」を共通のルールで識別できるようにします。
さらにデータ形式や管理方法についても一定のルールを設ければ、メーカーが異なる機械のデータであっても、まとめて管理・分析しやすくなります。
これは企業の業務システムにも、そのまま応用できる考え方です。
なぜ複数システムを導入するとデータがバラバラになるのか
企業のシステムは、最初からすべてを一体として作られるとは限りません。
営業部門ではCRM、受注部門では販売管理システム、物流部門では在庫管理システム、経理部門では会計システムといったように、それぞれの目的に応じてシステムが導入されていきます。
すると、同じ対象を管理していても、システムごとに異なるIDが割り当てられることがあります。
たとえば、ある顧客について次のように管理されているケースです。
| システム | 顧客の管理方法 |
| CRM | 顧客ID「C0001」 |
| 販売管理システム | 取引先コード「10001」 |
| 問い合わせ管理システム | メールアドレス |
| 請求管理システム | 請求先コード「A-001」 |
人が見れば、すべて同じ会社だと判断できるかもしれません。
しかし、システム側から見ると、「C0001」「10001」「A-001」は別々のデータです。
そのため、CRMにある営業履歴と販売管理システムにある購入履歴、問い合わせ管理システムにある問い合わせ履歴をまとめて分析しようとしても、簡単にはつながりません。
データが存在していることと、データを利用できることは別の問題なのです。
データを集めるだけでは「一元管理」にならない
データ一元管理というと、「各システムのデータを一つのデータベースに集めればよい」と考えられがちです。
しかし、単純にデータを集約しただけでは十分ではありません。
先ほどの例であれば、CRMの「C0001」と販売管理システムの「10001」が同じ顧客であることを判断できる必要があります。
商品でも同じです。
販売管理システムでは「商品コード:P001」、在庫管理システムでは「SKU:ABC-01」、ECシステムでは別の商品番号が使われている場合、それぞれが同じ商品であることを対応付けなければなりません。
つまり、一元管理で重要なのは、「データを一か所に集めること」だけではなく、「それぞれのデータが何を表しているのかを統一して識別できること」です。
ここで重要になるのが共通IDです。
共通IDを決めると複数システムのデータをつなぎやすくなる
共通IDとは、複数のシステムで同じ対象を識別するための共通の番号やコードです。
たとえば顧客であれば、「統合顧客ID」を新たに設定します。
CRMの「C0001」、販売管理システムの「10001」、請求管理システムの「A-001」を、統合顧客ID「CUSTOMER-0001」に対応付けます。
すると、次のように管理できます。
| 共通ID | システム | 各システムのID |
| CUSTOMER-0001 | CRM | C0001 |
| CUSTOMER-0001 | 販売管理 | 10001 |
| CUSTOMER-0001 | 請求管理 | A-001 |
この方法であれば、既存システムのIDをすべて変更する必要はありません。
既存のIDを残したまま、それぞれのIDと共通IDとの対応関係を管理する方法もあります。
これによって既存システムへの影響を抑えながら、システムを横断したデータ活用が可能になります。
共通IDは顧客だけではない
共通IDの考え方は、さまざまな業務に利用できます。
製造業であれば、設備ID、製品ID、部品ID、工場IDなどが考えられます。
小売業やECであれば、顧客ID、商品ID、店舗ID、注文IDなどがあります。
不動産業であれば、顧客ID、物件ID、契約ID、オーナーIDなどです。
人材サービスであれば、求職者ID、企業ID、求人ID、案件IDなどが考えられます。
重要なのは、「会社として何を同じものとして管理するのか」を決めることです。
システム連携というとAPIやデータベースなど技術面から考えがちですが、その前に「どのデータを、どの単位で識別するのか」という業務上の整理が必要です。
共通IDだけ決めてもデータ統合は完成しない
共通IDを設定すれば、すべての問題が解決するわけではありません。
たとえば、CRMでは会社名が「株式会社ABC」、販売管理システムでは「(株)ABC」、Excelでは「ABC社」と登録されていることがあります。
住所についても、「1丁目2番3号」と「1-2-3」が混在するケースがあります。
さらに、システムによって更新されるタイミングが違うこともあります。
CRMでは住所変更済みなのに、請求管理システムには以前の住所が残っているといった状態です。
そのためデータを一元管理する際には、共通IDだけでなく、
- どのシステムの情報を正とするのか
- 表記をどのように統一するのか
- 重複データをどのように判定するのか
- データをいつ同期するのか
- 変更されたデータをどのシステムへ反映するのか
- 誰がデータを登録・変更できるのか
といったルールも決める必要があります。
データ一元管理は、単なるシステム連携ではなく、企業全体のデータ管理方法を決める取り組みでもあります。
「どのシステムを正とするか」を決める
特に重要なのが、データの正本を決めることです。
たとえば顧客の基本情報をCRM、契約情報を契約管理システム、請求情報を請求管理システムで管理するとします。
顧客の住所が変更された場合、どのシステムで変更するのでしょうか。
CRMで変更した情報を他システムへ自動反映するのか、それとも別のマスター管理システムを用意するのか。
このルールが曖昧なままシステムを連携すると、「どの住所が最新なのか分からない」という問題が発生します。
そのためシステム設計では、データごとに管理元を明確にすることが重要です。
データ連携には複数の方法がある
複数システムのデータをつなぐ方法も一つではありません。
代表的な方法として、API連携があります。
システム同士がAPIを通じてデータをやり取りすることで、一方のシステムで変更された情報を別のシステムへ反映できます。
CSVなどのファイルを利用した連携もあります。リアルタイム性が必要ない業務では、一定時間ごとにファイルを出力・取り込みする方法が適している場合があります。
また、複数システムから必要なデータを集め、統合データベースやデータウェアハウスなどへ保存する方法もあります。
重要なのは、最新技術を使うことではありません。
「どのデータを」「どのタイミングで」「どのシステムからどのシステムへ」渡す必要があるのかを整理し、業務に合った方法を選択することです。
フルスクラッチが適しているケース
複数システムのデータ一元管理では、既製のサービスやパッケージで対応できる場合もあります。
一方で、企業独自の業務が多い場合は、フルスクラッチによるシステム開発が適しているケースがあります。
たとえば、長年使用している基幹システム、SaaS、Excel、独自開発した業務システムなどが混在している企業です。
各システムでID体系やデータ項目、更新タイミング、業務ルールが異なれば、単純なパッケージ導入だけでは対応できないことがあります。
また、「既存システムはそのまま残したい」「複数システムの情報を一つの画面で確認したい」「自社独自の顧客・商品・設備の管理方法に合わせたい」「将来的にAIやBIでデータを利用したい」といった要件がある場合も、既存環境を前提に個別設計できるフルスクラッチが選択肢になります。
大切なのは、最初からフルスクラッチありきで考えることではありません。
既存システムを活用できる部分、新たに開発すべき部分、外部サービスと連携すべき部分を整理し、必要な範囲を見極めることです。
AI活用でも共通IDとデータ一元管理が重要になる
AIを導入すれば、社内にあるデータを自動的に理解して活用してくれるわけではありません。
顧客、商品、設備、取引などのデータがシステムごとに分断され、同じ対象を識別できない状態では、AIに渡すデータを準備する段階で大きな手間が発生します。
たとえば「優良顧客の特徴を分析したい」と考えても、営業履歴、購入履歴、問い合わせ履歴が別々の顧客として管理されていれば、まずデータを対応付ける作業が必要です。
これは製造業でも同じです。
機械の稼働データを大量に収集しても、どの設備の、どの条件で取得されたデータなのかを整理できなければ、比較や分析は難しくなります。
フィジカルAIの開発に向けてメーカーを越えた共通IDの活用が検討されていることは、AI時代のデータ活用を考えるうえでも示唆があります。
AI活用の準備は、AI製品を選ぶところから始まるとは限りません。
その前段階として、自社のデータを識別し、つなぎ、利用できる状態にしておくことが重要です。
データ一元管理は「集める」から「つなぐ」へ
企業にはすでに多くのデータが存在しています。
問題は、データがないことではなく、複数のシステムやExcel、部門などに分散し、相互に関連付けられていないことです。
そのため、これからのデータ活用では「データを増やす」だけでなく、「既にあるデータをどうつなぐか」という視点が重要になります。
共通IDは、そのための有効な方法の一つです。
顧客、商品、設備、案件、契約など、自社の業務で重要となる対象に共通の識別方法を設けることで、これまで別々に存在していたデータを横断的に利用しやすくなります。
そして、その先に業務効率化、経営分析、顧客理解、AI活用などがあります。
まとめ
複数システムのデータを一元管理する際に重要なのは、単にデータを一か所へ集約することではありません。
「どのデータが同じ顧客・商品・設備・案件を表しているのか」を識別できるようにする必要があります。
そのための方法の一つが共通IDです。
共通IDによって複数システムのデータを関連付け、データ形式、管理元、更新方法、連携タイミングなどを整理することで、分散していたデータを横断的に利用しやすくなります。
メーカーを越えて産業機械に共通IDを付与する取り組みも、「異なるシステムや機器のデータをどうつなぐか」という企業のデータ活用に共通する課題を示しています。
AIやデータ分析を本格化する前に、自社では顧客・商品・設備などをシステム横断で同じものとして識別できているかを確認することが、データ活用の第一歩になります。
さいごに
複数のシステムに分散したデータを一元管理するためには、単にシステム同士を接続するだけでは十分ではありません。顧客・商品・設備・案件などをどの単位で管理するのか、共通IDをどう設計するのか、どのシステムのデータを正とするのかまで、実際の業務に合わせて整理することが重要です。
当社フレシット株式会社は、フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発を専門としており、お客様ごとの業務や既存システムを理解したうえで、必要なシステムをご提案・開発しています。
「複数のシステムにデータが分散している」「既存システムを残しながらデータを一元管理したい」「将来のAI活用を見据えてデータを整理したい」といった場合も、現在の業務やシステム環境を踏まえた設計が可能です。
パッケージに業務を合わせるのではなく、自社の業務に合ったシステムを作りたいとお考えでしたら、ぜひ当社フレシット株式会社へご相談ください。
>>フルスクラッチ(オーダーメイド)のシステム開発について詳細はこちら
著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

公式Xアカウントはこちら