【ゲオHDの独自査定システムに学ぶ】過去の実績データから「適正価格」を自動算出するシステムとは?価格決定を属人化させない仕組み
属人的な価格判断から、データに基づく意思決定へ
2026-10-23

商品やサービスの価格を決める際、「最終的には担当者の経験で決めている」「過去のExcelを見ながら似た案件を探している」「経験豊富な社員でなければ適正価格を判断できない」といった企業は少なくありません。
こうした価格決定の属人化を解消する方法の一つが、過去の取引実績や市場相場などをデータベースに蓄積し、条件に応じて適正価格を自動算出するシステムです。
リユース業界では、ゲオホールディングス(HD)が年間1億点を超える買い取り実績と市場相場をデータベース化し、カテゴリーやブランド名などから参考となる適正価格を算出する独自の査定システムを開発しています。
この考え方は、リユース業界だけのものではありません。
製造業、卸売業、商社、不動産、中古車、レンタル、買取、BtoBサービスなどでも、過去の販売実績、仕入価格、原価、見積実績、顧客属性といった自社データを活用することで、「人が過去の資料を探して価格を決める業務」をシステム化できる可能性があります。
本コラムでは、過去の実績データから適正価格を算出するシステムの仕組みと、価格決定の属人化を解消するためのポイントを解説します。
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目次
【記事要約】ゲオHD、年間1億点超の買い取りデータを活用した独自査定システムで適正価格を算出
ゲオホールディングス(HD)は、リユース商品の査定業務を支援する独自システムを開発しています。年間1億点を超える買い取り実績と直近の市場相場をデータベースとして蓄積し、商品のカテゴリーやブランド名などの情報を入力することで、買い取り時の参考となる適正価格を自動算出できる仕組みです。査定担当者個人の経験だけに依存せず、蓄積した実績データと市場動向を値決めに活用できる点が特徴です。同社は査定システムやPOSシステムの多言語化も進めており、海外店舗における現地人材の活用や店舗運営を支える基盤として、デジタル技術を取り入れています。
出典:日本経済新聞「日本の『リユース』世界へ AI査定、値決め精度向上 トレファク、タイ定着/ゲオHD1000店目標」2026年8月24日付朝刊
ポイントをひとことで
価格決定のシステム化で重要なのは、熟練者の判断をそのまま自動化することではなく、「何を見て、なぜその価格にしたのか」をデータとして残せる仕組みをつくることです。最初からAIによる高度な予測を目指すより、過去の実績を整理し、判断結果とその理由を継続して蓄積できるようにする方が、将来のシステム投資にもつながります。人が判断を修正した履歴まで残せば、それ自体が次の判断材料になります。システムは人の判断を奪うものではなく、経験を会社の資産として積み上げ、誰でも活用できる状態にするための基盤として考えることが大切です。
なぜ価格決定は担当者に依存しやすいのか
企業の価格決定は、単純に「原価+利益率」で決められるとは限りません。
実際の業務では、商品の種類、仕入価格、在庫状況、顧客との取引実績、過去の販売価格、市場価格、競合価格、季節、納期、数量など、さまざまな条件を考慮して価格を決めています。
その結果、経験豊富な担当者ほど、「この顧客ならこの価格まで調整できる」「この商品は最近の相場ならこの程度」「似た案件では以前この金額で販売した」といった判断ができるようになります。
一方で、その判断材料やルールがシステムに蓄積されていなければ、ノウハウは担当者個人の中に残ります。
新人や別の担当者は同じ判断ができず、過去のExcelや見積書、販売履歴を一つずつ確認しなければなりません。
担当者によって提示価格が変わる、価格決定に時間がかかる、熟練者に確認が集中するといった問題も発生します。
価格決定の属人化を解消するには、単にマニュアルを作るだけではなく、「何を根拠にその価格を決めたのか」をデータとして蓄積し、再利用できる状態にすることが重要です。
過去の実績データから適正価格を算出するシステムとは
適正価格を算出するシステムでは、過去の取引データや現在の市場データなどをデータベースに集約し、入力された条件に応じて参考価格を提示します。
たとえば、商品の価格を決めるシステムであれば、次のようなデータが判断材料になります。
- 商品カテゴリー
- 商品名
- ブランド
- 型番
- 仕入価格
- 過去の販売価格
- 販売数量
- 在庫数量
- 販売時期
- 顧客属性
- 取引数量
- 原価
- 利益率
- 市場相場
- 過去の値引き実績
担当者が必要な条件を入力すると、システムが過去の類似取引や設定された計算ルールなどをもとに、推奨価格を表示します。
重要なのは、システムが人間に代わって最終価格を決定することだけが目的ではないという点です。
「システムが参考価格を提示し、最終判断は担当者が行う」という使い方もできます。
担当者がゼロから価格を考えるのではなく、データに基づく判断材料を最初から提示することで、価格決定のスピードと一貫性を高められます。
ゲオHDの独自査定システムから分かる「データを蓄積する価値」
ゲオHDの取り組みで重要なのは、単に査定業務をデジタル化したことだけではありません。
年間1億点を超える買い取り実績という、自社が長年の事業活動によって蓄積してきたデータを査定に活用している点です。
企業には日々の業務を通じて多くのデータが蓄積されています。
しかし、「保存されていること」と「業務判断に利用できること」は同じではありません。
販売履歴は販売管理システム、見積もりはExcel、原価は基幹システム、市場価格は外部サービスといったように情報が分散していると、価格決定のたびに担当者が複数の情報を確認する必要があります。
そこで必要になるのが、価格決定に必要な情報を整理し、システムから利用できる状態にすることです。
過去に蓄積したデータを「保管するためのデータ」から「次の判断に使うデータ」へ変えることで、自社独自のノウハウを業務システムへ反映できるようになります。
「経験と勘」をすべてなくす必要はない
価格決定をシステム化すると聞くと、「担当者の経験をすべて機械に置き換える」と考えられがちです。
しかし、実際には経験豊富な担当者の判断が必要な場面もあります。
特殊な商品、前例のない取引、重要顧客との商談など、データだけでは適切な判断が難しいケースもあるためです。
そこで現実的なのが、「定型的な判断はシステム」「例外的な判断は人」という役割分担です。
たとえばシステムが推奨価格を10万円と算出した場合でも、担当者が市場状況や顧客との関係を踏まえて9万5,000円に変更できるようにします。
さらに「なぜ変更したのか」という理由も記録すれば、その判断自体が新しいデータになります。
システムが算出した価格と実際に決定した価格、その理由、最終的な販売結果を継続して蓄積することで、価格決定に利用できるデータを増やしていくことができます。
AIを導入する前に価格データを整える
適正価格の自動算出というテーマでは、AIの導入を検討する企業もあるでしょう。
しかし、最初からAIありきで考える必要はありません。
まず確認したいのは、自社にどのようなデータがあり、それをどの程度利用できる状態になっているかです。
過去の価格データがExcelや紙、担当者個人のファイルなどに分散していたり、同じ商品でも名称やカテゴリーの登録方法が異なっていたりすれば、そのままでは分析しにくくなります。
たとえば、「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC社」が別々の顧客として登録されていれば、同一顧客の取引履歴として正確に集計できません。
商品名、商品コード、顧客コード、カテゴリー、価格、日時などのデータを整理し、一貫したルールで蓄積できるようにすることが先決です。
そのうえで、最初は「条件に一致する過去実績を表示する」「過去平均を算出する」「設定した計算式から推奨価格を提示する」といった比較的シンプルな機能から始める方法があります。
十分なデータが蓄積されてから、AIや機械学習による価格予測へ発展させることも可能です。
適正価格の自動算出はさまざまな業界で活用できる
価格算出システムは、リユース業界の査定だけに限定されません。
たとえば製造業では、製品仕様、材料費、加工時間、数量、過去の見積実績などから参考見積価格を算出できます。
商社や卸売業では、仕入価格、販売数量、顧客ごとの取引条件、過去の販売実績などから販売価格の候補を提示できます。
中古車や中古機械では、メーカー、型式、年式、状態、走行距離や稼働時間、過去の売買実績、市場相場などを査定に利用できます。
不動産であれば、エリア、面積、築年数、設備、過去の成約データなどが価格判断の材料になります。
BtoBサービスでも、作業内容、工数、担当者のスキル、過去案件、契約条件などから見積金額の算出を支援できます。
つまり、「担当者が過去の事例を探し、それを参考に金額を決めている業務」であれば、システム化を検討できる余地があります。
なぜ価格算出システムとフルスクラッチ開発は相性が良いのか
価格の決め方は企業によって大きく異なります。
同じ業界であっても、A社では原価と利益率を重視し、B社では市場相場を重視し、C社では顧客別の取引条件を加味するといった違いがあります。
さらに、使用している商品コード、顧客区分、承認フロー、外部データ、既存システムも企業ごとに異なります。
そのため、自社独自の価格決定ルールをシステム化する場合、既製のパッケージでは業務に合わせにくいケースがあります。
フルスクラッチであれば、自社の価格決定プロセスに合わせて、必要なデータ、計算ルール、画面、権限、承認フロー、既存システムとの連携などを設計できます。
たとえば、「通常商品は自動算出」「一定金額以上は上長承認」「利益率が基準以下なら警告」「重要顧客は営業担当者が調整可能」「市場相場が急変した場合は参考価格を再計算」といった、自社独自の業務ルールを組み込むことも可能です。
価格算出システムでは、機能の多さよりも「自社が実際にどのように価格を決めているのか」を正しくシステムへ反映することが重要になります。
価格算出システムを開発する前に整理すべきこと
システム開発会社へ相談する前に、現在の価格決定業務を整理しておくと要件を明確にしやすくなります。
まず、「誰が」「どのタイミングで」「何を見て」「どのように価格を決めているのか」を洗い出します。
特に重要なのが、経験豊富な担当者へのヒアリングです。
「なぜこの価格にしたのか」「どの情報を確認したのか」「どのような場合に価格を変更するのか」「判断に迷うのはどのようなケースか」といった内容を確認すると、これまで言語化されていなかった判断ルールが見えてきます。
そのうえで、必要なデータがどこに保存されているのかを確認します。
最初からすべてを自動化するのではなく、まず「過去実績を検索できるようにする」、次に「参考価格を自動算出する」、その後「市場データと連携する」といった段階的な開発も選択肢になります。
価格算出システムを現場で使うためには「算出根拠」も重要
適正価格を表示するだけでは、実務で使われない可能性があります。
担当者からすると、「なぜこの金額なのか」が分からなければ、その価格を顧客への提示や買い取り判断に使いにくいためです。
そこで、価格とあわせて算出根拠を確認できる設計が重要になります。
たとえば、「同カテゴリーの直近6カ月の平均価格」「過去の類似案件10件」「現在の市場相場」「原価率」「設定されている利益率」などを確認できれば、担当者はシステムの提示価格を判断材料として利用しやすくなります。
また、管理者側も「どのデータをもとに価格が算出されたのか」を確認できるため、計算ルールの見直しにもつながります。
自動化そのものを目的にするのではなく、「担当者が納得して判断できる情報を提示する」という視点が、現場で使われる価格算出システムには欠かせません。
まとめ
過去の実績データから適正価格を自動算出するシステムは、価格決定を単純に機械へ置き換えるものではありません。
これまで担当者個人が持っていた経験や、社内に蓄積されてきた取引実績、市場相場などを整理し、次の判断に利用できる状態にする仕組みです。
価格決定が属人化している企業では、担当者による価格のばらつき、判断時間の長期化、熟練者への確認集中、ノウハウ継承の難しさといった課題が発生しやすくなります。
まずは現在どのような情報をもとに価格を決めているのかを整理し、過去データを検索・比較できる状態をつくることが第一歩です。
その後、参考価格の自動算出、市場相場との連携、承認フロー、AIによる予測などへ段階的に発展させることもできます。
企業が長年の事業活動で蓄積してきたデータは、単なる過去の記録ではありません。適切に整理して業務システムへ組み込むことで、担当者の判断を支え、価格決定の属人化を減らすための重要な経営資産になります。
さいごに
価格決定の属人化を解消するためには、単に価格を自動計算する機能を導入するだけでは十分ではありません。自社に蓄積された実績データを整理し、「どの情報をもとに、どのような条件で価格を算出するのか」という独自の判断ルールをシステムへ落とし込むことが重要です。
特に、査定基準や見積方法、承認フロー、既存システムとの連携方法は企業ごとに異なります。そのため、既製のシステムに業務を合わせるのではなく、自社の業務や価格決定の考え方に合わせて設計できるフルスクラッチ(オーダーメイド)開発が有効な選択肢になります。
当社フレシット株式会社は、フルスクラッチのシステム開発を専門とし、お客様ごとの業務内容や課題を整理したうえで、必要な機能を一から設計・開発しています。
「過去の実績データを価格決定に活用したい」「担当者の経験に依存している査定や見積業務をシステム化したい」「自社独自の価格算出ルールをシステムに組み込みたい」といったご要望にも、業務に合わせたシステムをご提案できます。
自社に蓄積されたデータを、保存するだけの情報から日々の判断に活用できる仕組みへ変えたいとお考えでしたら、ぜひ当社フレシット株式会社へご相談ください。
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著者プロフィール
フレシット株式会社 代表取締役 増田順一
柔軟な発想でシステム開発を通して、お客さまのビジネスを大きく前進させていくパートナー。さまざまな業界・業種・企業規模のお客さまの業務システムからWEBサービスまで、多岐にわたるシステムの開発を手がける。一からのシステム開発だけでは無く、炎上案件や引継ぎ案件の経験も豊富。システム開発の最後の砦、殿(しんがり)。システム開発の敗戦処理のエキスパート。

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