アジャイル開発のメリットとデメリットとは?開発会社へ依頼する際のポイントについても解説
2025-02-07

アジャイル開発は、迅速なフィードバックや柔軟な対応を重視した開発手法として、システム開発手法の中でも近年特に注目を集めています。時代の流れが速く、急激なビジネス変化への対応が求められる現代においては、非常に効果的な手法といえるでしょう。
しかし、自社のプロダクトやソフトウェア開発で、アジャイル開発を取り入れたいと検討している方の中には、「アジャイル開発のメリット・デメリットがよくわからない」「どの開発会社に依頼すれば良いかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、アジャイル開発の特徴やメリット、デメリットをはじめ、失敗しないための開発会社選びのポイントまでお伝えしますので、アジャイル開発会社への依頼を検討している方は参考にしていただけますと幸いです。
目次
アジャイル開発とは
アジャイル(agile)とは、「すばしこい、機敏な」という意味となります。アジャイル開発は、開発サイクルの短縮を実現するもので、名称が示す通り迅速性が特徴です。
従来のウォーターフォール型開発では、急激なビジネスの変化に対応することが難しいという課題を背景に、アジャイル開発が注目を集めているのです。
アジャイル開発は、短期間で動作する成果物をリリースし、フィードバックを受けて改善する一連の反復的なサイクルが基本であり、一度リリースしたらそこで終わりではなく、リリース後のソフトウェアに対するフィードバック自体も開発サイクルに含まれることが原則です。
この開発サイクルの単位を「スプリント」と呼び、長さは通常1〜4週間程度の期間で実施します。
2001年に17人の技術者によって作成された、「アジャイルソフトウェア開発宣言(Agile Manifesto)」でアジャイル開発の価値観が宣言されています。
これは、ウォーターフォール型開発への対抗で、本来作成すべきものを柔軟に迅速に作り、価値を届けようという考え方に基づきます。
PMI日本支部 アジャイル研究会の調査によると、アジャイル開発を取り入れている企業は2024年度では44%であり、近年は高止まり傾向にありますが、数年前と比較すると増加しています。

参考資料:2024年度 アジャイルプロジェクトマネジメント 意識調査報告書
アジャイル開発の開発手法
アジャイル開発は開発手法の総称であり、いくつかの手法から構成されます。
代表的な手法には、
「スクラム」、「エクストリーム・プログラミング(XP)」、「カンバン」、「リーンアジャイル」があります。
以下、それぞれについて解説します。
スクラム
スクラムはアジャイル開発の中でも特に代表的な手法で、チーム一体となって開発を促進するフレームワークです。
ラグビー用語の「スクラム(Scrum)」に由来しており、技術者が顧客と一体となって行う開発手法で、問題解決に取り組む姿勢を象徴しています。
スクラムはスクラムチームと呼ばれる小規模なチームに分かれ、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームとそれぞれの役割を明確にして開発作業を反復的に進めます。
短期間のスプリントを繰り返し成果物を段階的に完成させることで、顧客のニーズや仕様変更への柔軟な対応が可能となります。
エクストリーム・プログラミング(XP)
エクストリーム・プログラミング(XP)は、技術者を重視した開発手法で、特に、仕様変更や機能追加に柔軟な対応を行うことが特徴となります。
エクストリーム・プログラミング(XP)は19から成るプラクティスで構成され、テスト前にテストケースを作成する「テスト駆動開発」、ソースコードをもとにして設計を改善する「リファクタリング」、常にテストが済んでいる状態でビルドする「継続的インテグレーション」、ペアプログラミングを取り入れたプラクティスなどがあります。
開発のすべてのプロセスで品質を保ちつつ迅速な変更にも対応可能であり、顧客と密接に協力した頻繁なリリースを通してフィードバックを成果物に反映しやすい点も特徴的です。
カンバン
カンバンは、視覚的なタスク管理をすることでプロジェクトの流れを効率化する手法です。
「今あるものをより良いものにしていく」という考え方に基づいて、PDCAサイクル(計画、実行、確認、改善)を実行していきます。
具体的には、タスクをボードなどに見えるよう表示し、「To Do」「In Progress」「Done」などのステータスを用いて進捗管理します。
作業のボトルネックを特定しやすくなり、ワークフローの最適化が可能です。
リーンアジャイル
リーン生産方式をソフトウェア開発に適用した手法がリーンアジャイルです。
無駄を省き、継続的な改善に重点を置いて、価値を生み出すことの最大化を目指したアジャイル開発手法です。
プロジェクト全体のリソースを効率的に活用し、少ないリソースでも大きな成果を上げることを重視しているため、コスト削減や品質向上を同時に達成したいプロジェクトに最適です。
アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
アジャイル型と従来よく採用されていたウォーターフォール型の開発では進め方が大きく異なります。
下の図のように、ウォーターフォール開発は、滝から水が流れるように工程が上から下へと一度ずつ順番に進んでいくのに対して、アジャイル開発は短いスプリントを繰り返しながら進めます。
ウォーターフォール開発は後戻りが難しく、計画変更は困難ですが、アジャイル開発は開発途中の変更にも柔軟に対応することが可能です。
また、アジャイル開発は、反復的なプロセスで進捗状況を常に確認しながら開発が進んでいくため、顧客やユーザーからのフィードバックを取り入れやすい点が特徴です。

図:ウォーターフォールとアジャイルの比較
参考資料:アジャイル開発をウオーターフォール開発と比較して、向き不向きやメリデメを把握しよう
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発には一長一短があり、
導入の際にはメリットとデメリットの双方をあらかじめ理解する必要があります。
まず、アジャイル開発のメリットを解説します。
開発途中での仕様変更に柔軟に対応することが可能
アジャイル開発は短期間で反復作業を行うため、
開発途中でも必要に応じて仕様を変更できる柔軟性を持っています。
プロジェクト中に発生した環境の変化、新しい要件の追加などにも迅速に対応できるでしょう。
不具合や修正へも柔軟な対応
短い期間であるスプリントを繰り返す開発手法のため、柔軟な対応が可能です。
開発中の不具合やトラブルの発見・修正を迅速に行うことができます。
大規模な手戻りを防ぎつつプロジェクトを進行できるため、納期や予算への影響を最小限に抑えられるでしょう。
開発スピードが速い
アジャイル開発はスピードが速いという特長もあります。
作業単位を小さく分割し、優先順位をつけて実行することで効率的な開発が可能となります。
動作可能となった部分を短期間で提供できるため、顧客は早期に開発内容を確認できるのです。
結果、開発の停止リスクを回避できるほか、必要機能を最優先で提供することができます。
また、コミュニケーションとフィードバックのサイクルを何回も行うことで、課題解決をスピーディーにし、全体的な開発速度を上げることも可能となります。
機能のニーズをすぐに反映できる
アジャイル開発のメリットとして、ユーザビリティの向上や機能のニーズをすぐに反映できる点がメリットです。
ユーザーや顧客からフィードバックを収集し、次の期間で反映するプロセスを組み入れることが可能なため、製品の完成前から実際にユーザーニーズに応えられ、ユーザー体験を改善する機会も増やすことができるのです。
チームワークの向上
アジャイル開発はチームワークの向上が期待できます。
短いスプリントを繰り返す中で、メンバー同士が頻繁に協力し、成果を出していく経験を重ねることで、信頼関係が深まります。
チームワークが向上することで、個人のスキルが相乗効果を発揮し、プロジェクト全体での成功確率も高くなります。
アジャイル開発のデメリット
続いて、アジャイル開発のデメリットを解説します。
スケジュール管理が難しい
アジャイル開発はスプリントごとに成果物をリリースするため、スケジュール管理が難しい特徴があります。
全体のスケジュール管理には、計画の精度を維持する経験が必要です。
方向性が定まりにくい
アジャイル開発は短い期間のスプリントやイテレーションを繰り返しつつ進行するため、全体的な方向性が定まりにくく、チームが脱線しやすいデメリットがあります。
長期的なプロジェクトには向いていない
スケジュール管理が難しいことに関連して、アジャイル開発は大規模で長期的なプロジェクトには向いていません。
これは短いスプリントに集中していると長期的な視点が欠如しやすくなる傾向があるためで、どちらかというと小規模なプロジェクトに向いているといえます。仮に大規模なプロジェクトでアジャイル開発を導入する場合には、プロジェクトを細分化する必要があるでしょう。
コミュニケーションのコストがかかる
アジャイル開発はチームのコミュニケーションに大きく依存してしまいます。
メンバー間のコミュニケーションがうまく取れない場合には、アジャイル開発の効果が十分に得られません。
一方で、デイリースクラムやレビューといったコミュニケーションの場を多く設定すると、作業時間を圧迫する可能性があるため、注意が必要です。
熟練したスキルが必要
アジャイル開発は従来のウォーターフォール開発とはスキルが異なるため、アジャイル開発に対する熟練したスキルが必要です。
プラクティスの中にはテスト駆動開発やリファクタリングといった熟練したプログラミングスキルが求められるものがあり、チーム内のスクラムマスターやプロダクトオーナーには、専門的な役割を担うための十分な知識が必要です。
アジャイル開発での成功事例・失敗事例
アジャイル開発で発生しうる事例を紹介します。
成功した事例と失敗した事例をそれぞれ挙げながら解説します。
成功事例
ウォーターフォール開発を予定していたアプリ開発をアジャイル開発に変更し、顧客が要望した新規機能を早期に実装しました。
また、顧客と密接に連携し、ユーザーの意見を参考に開発を進めることができたため、継続的にフィードバックを取り入れて機能の改善を繰り返しました。結果、リリース後には、ユーザー数が大幅に増加し売り上げの増加にもつながりました。
このようなユーザー中心の開発は顧客満足度の向上につながり、市場競争力の強化にもなります。
失敗事例
あるプロジェクトでは、顧客からの仕様変更が頻繁に発生し、要望も次々と増加しました。
結果として適用範囲が大幅に拡大し、リソース不足とスケジュール遅延が発生しました。原因は適用範囲の管理が不十分であり、顧客からの要望を無制限で対応してしまった点にあります。
対策として、計画の際に対応可能な範囲を明確にし、新たな要望は優先順位をつけて次のスプリントに含めるようにしました。
アジャイル開発を行うべき会社の特徴とは
アジャイル開発でシステム開発を行うべき会社の特徴を具体的に解説します。
要件や仕様変更が発生しやすい
アジャイル開発は要件や仕様の急な変更、機能追加、トラブルなどに柔軟に対応可能なため、ビジネスでの市場環境や顧客ニーズが頻繁に変化する業界には適しています。
特に、サブスクリプション型サービスや、変化の激しいデジタル製品の開発では、新たな要求に迅速に対応できるため、市場やユーザーの変化に対応し、競争力の維持ができるでしょう。
迅速な開発がしたい
アジャイル開発は迅速な開発が特長です。
迅速に動作する製品をリリースし、フィードバックを活用しながら早期に提供できるよう目指すため、リリースまでの時間を短縮できるだけでなく、リスク管理も容易です。
優先順位が高いタスクから順番に開発していくことで、短期間でのサービス公開が可能な点も魅力のため、新規事業の立ち上げや、競争が激しい市場での開発など、スピードが必要となる場面では有効です。
顧客からフィードバックを受けることができる
アジャイル開発は顧客との継続的な関係が成功の鍵を握ります。
開発中でも継続的に顧客とのコミュニケーションによるフィードバックを受け取る仕組みがあるため、顧客からのニーズに応じた製品提供が可能です。
顧客のニーズや市場環境が変化しやすい状態にある場合に特に有効です。
アジャイル開発会社選びで失敗しないためのポイント
アジャイル開発を成功させるためには、開発会社選びが非常に重要です。どれだけ優れた開発手法であっても、パートナー会社が適切でなければ期待する成果を得るのは難しくなるためです。
ここでは、開発会社を選ぶ際のポイントを3点ご紹介します。
実績や専門性がある
アジャイル開発には独自の手法があるため、アジャイル開発の経験を持ち、すでに豊富な実績や専門知識がある会社が望ましいでしょう。
依頼する際に過去のプロジェクト事例や開発実績を確認し、アジャイル開発の経験が豊富であるか確認する必要があります。
コミュニケーション能力が高い
アジャイル開発では、要件や仕様の変更や追加が頻繁に発生するため、柔軟に対応できる体制や円滑なコミュニケーションができる会社を選択することが大切です。
デイリースクラムやレビューなどで密なやり取りが可能な会社が望ましいでしょう。
サポート体制が充実している
プロジェクト終了後もトラブル対応や追加開発が発生する可能性があります。
そのため、サービス公開後も継続してサポート(運用保守)を受けられる体制が整っている会社を選びましょう。
また、バグ修正や追加機能の開発に対応可能であるか、長期的な運用保守体制が整っているかなどの確認も必須でしょう。特に、過去のシステム開発にともなうトラブルを解決してきた経験が豊富であると信頼性がより高いと言えます。
さいごに
本コラムでは、アジャイル開発のメリットとデメリット、そして、トラブル時に開発会社へ依頼するポイントについて詳しく解説させていただきました。
フレシット株式会社では、アジャイル開発のメリットを最大化し、デメリットを低減させるための実案件を通して得た知見を基に、上記で説明させていただきましたアジャイル開発の一般的な手法にとどまらず、手法の改善・進化に取り組んでまいりました。
この豊富な経験を基に、お客さまごとにお取引の形を最適化させていただき、そのお取引の形に最適化したアジャイル開発を提供させていただきます。
下記のようなお客さまに適しているサービスでございます。
- まだ、開発するシステムが細部まで固まり切っておらず、まずは、着手して動くものを見ながら少しずつ大きくしたい。
- まずは、要件定義に数ヶ月かけるのではなく動くシステムを使用しつつ、次に、必要な機能を決めていきたい。
- 企画やサービスの構想はあるので、それをしっかり把握して、積極的に提案を行って欲しい。そして、同じ方向を向いて、システム開発を強力に推進して欲しい。
- ユーザーのニーズの変更に応じて、柔軟に次に開発する機能の仕様や優先順位の変更に対応して欲しい。
もし、上記にあてはまる課題をお持ちのお客さまがいらっしゃいましたら、まずは、下記よりお問い合わせをいただければと思います。